2016.10.19 収入保障・就業不能保険が活況、ニーズ捉え商品が急増

 被保険者が死亡または高度障害状態になったときに年金が支払われる死亡保険「収入保障保険」や、病気やけがによる長期入院などで働けなくなった時に備える「就業不能保険」、就業不能状態を保障する「特定疾病保険」「終身医療保険」などの発売が相次いでいる。背景には、顧客ニーズの高まりと同時に、「マイナス金利の影響で売り止めが相次ぐ貯蓄性商品を補完したい」との保険会社の考えもある。収入保障保険に“就業不能状態の保障”を加えた商品の増加や、商品バージョンアップの動きも顕著だ。
 主力商品に特約を付加する形の商品では、13年12月発売の第一生命「ブライトWay」や15年9月発売の住友生命「未来デザイン(1UP)」などが好調。
 1UPは、社会復帰を支援することをコンセプトに、生前保障から死亡保障を分離して別々に保障を準備できるようにし、「生活保険」との考え方を示した。中小企業市場に強みを持つ大同生命は、経営者の就業不能状態を保障する保険に力を入れているが「今年度も就業不能保障分野を一層開拓していく」としている。
 昨年末以降の動向をみると、15年12月にエヌエヌ生命が新しい「収入保障保険」を、今年3月には太陽生命が「働けなくなったときの保険」を発売した。オリックス生命は、今年5月に発売した特定疾病保障保険「ウィズ」で「生活水準保障」(休業中でも罹患(りかん)前と同じ生活水準を維持できるようにする)という考え方を打ち出した。
 8月にはT&Dフィナンシャル生命が収入保障2商品について、最低年金月額の引き下げや保障範囲の拡大などのリニューアルを行った。
 昨年5月に死亡保障分野に本格参入したメディケア生命は、今年9月に「メディフィット収入保障」の収入保障年金、高度障害年金額毎月5万円タイプの提供を開始した。14年7月に「収入保障保険プレミアム」を発売したチューリッヒ生命は、今年9月に「くらすプラス」(終身医療保険)で就業不能リスクを保障する保険を投入している。
 同社の商品はストレス性疾患を保障する点も特長で、「今後も両商品の拡販を図る」方針だ。さらに、9月後半には、ネオファースト生命が「ネオdeしゅうほ」の販売を開始するなど、関連商品の勢いが止まらない。
 また、収入保障保険の取り扱いが10年超となる損保ジャパン日本興亜ひまわり生命や三井住友海上あいおい生命は、安定的な販売を継続。09年3月に収入保障保険を発売したアクサダイレクト生命は、販売が一時落ち込んだものの、昨年度からは大きく回復させている。
 一方「就業不能保険」を明確に打ち出しているのがライフネット生命とアフラック。ライフネット生命は、10年に発売した「働く人への保険」をバージョンアップさせて今年6月に「働く人への保険2」としてリリースしている。アフラックは、7月に「給与サポート保険」の提供を開始し、がん保険・医療保険に続く「3本目の柱」に位置付けた。テレビCMなどで認知度の拡大を図っており、販売も順調だ。
 全般的には、非喫煙による保険料の割引を導入する会社が増え、標準体だけでなく健康体(優良体)によって一層割安にするというさらなる細分化も見られる。
 「保険料低減の仕組みを設ける」「保険料払い込み期間の選択肢を増やす」「保険期間を90歳まで延長する」といった商品改良の動きも目立っており、保険料払い込み免除とする範囲も広がる傾向にある。
 その他、「確定年金により、被保険者死亡後も支払う」「支払い開始当初などの一時金と年金の組み合わせができる」「傷病手当金が最長1年半支払われることを考慮してハーフタイプを設ける」など各社が独自性を競っている。
 直近の状況については、「商品数や認知度アップの取り組みが増えてきたことで、販売環境が好転している」とみる保険会社が多い。