2016.10.12 第一生命が国立がん研究センターと共同研究、疾病予防・健康増進シナリオ開発
第一生命はこのほど、国立がん研究センター(中釜斉理事長)と疾病予防・健康増進に向けた共同研究を開始すると発表した。研究を通じ幅広く「医療ビッグデータ」の活用を推進する。同センターの持つ優れた技術や実績と、第一生命の持つ保険医学分野の知見、顧客や社会に対する情報発信のノウハウ・機能とを組み合わせることで、個人別のリスクに基づく効果的な疾病予防・健康増進シナリオの開発と、健康寿命延伸に関する共同研究・開発につなげる。
共同研究では、一人一人の健康状態や運動・食事、喫煙・飲酒などの生活習慣の情報に基づいて、重大な疾病リスクの軽減・予防、健康増進に役立つ効果的な生活習慣(運動、食事、喫煙・飲酒など)の改善シナリオとアドバイスの開発・提供を行う仕組みづくりを検討する。
また、日本人の健康寿命延伸に資するエビデンスの蓄積を目的に、健康状態、生活習慣、ライフステージ・ライフイベントと、疾病罹患(りかん)や入院、死亡などとの関連性の解析にも取り組む。
国立がん研究センターは、世界最高水準のがん医療、国のがん登録制度の運営、発がんリスクに関する先進的研究などに加え、がんを含めたさまざまな疾病の予防や健康増進について先進的で高度な取り組みを展開している。その代表的な取り組みとして、がんや循環器疾患、脳卒中などの重大な疾病に関するリスクやその要因について、国立循環器病研究センターや大学・保健所などとの連携により、長期にわたる大規模な観察に基づく研究である「JPHCスタディ(注1)」(多目的コホート研究)を行っており、幅広く生活習慣病に関するリスクチェックツール(注2)を開発するなどのノウハウ・技術を持っている。
一方、第一生命は、保険ビジネス(Insurance)とテクノロジー(Technology)の両面から生命保険事業独自のイノベーションを創出する取り組みを“InsTech”(インステック)と銘打ち、優先的な戦略課題としてグループ全体で推進。中でも特に重要なテーマとして「医療ビッグデータ」の活用に取り組んでいる。
共同研究に際して第一生命は、同社に所属する医師を国立がん研究センター「社会と健康研究センター」に9月から派遣するとともに、本社スタッフもリスクチェックツールの高度化に向けた取り組みに参画。同ツールの高度化により、リスク増加に影響を与える因子ごとに、より一人一人の健康状態や生活習慣に沿った改善アドバイスの提供の実現を図る。
第一生命は、国立がん研究センターと2012年に包括的連携協定を締結し、これまでも同センターのがんに関する専門性の高い情報を、セミナー、リーフレット、営業職員の携帯パソコン用コンテンツなどを通じて幅広く提供してきた。
同社では今後、これらの取り組みをさらに発展させ、広く疾病予防・健康増進をサポートすることで、健康寿命の延伸などの国民的課題の解決に向け、さらなる貢献を図るとしている。
(注1)「Japan Public Health Center-based Prospective Study」のこと。日本の約10万人の地域住民を対象に10年以上にわたる長期追跡を実施し、生活習慣や健康に関する情報などを提供してもらうことで、どのような生活習慣を持つ人ががん・脳卒中・心筋梗塞・糖尿病などになりやすいのか、あるいはなりにくいのかを明らかにすることを目的としている。
(注2)「JPHCスタディ」の研究結果を基に、国立がん研究センターが11年4月に開発したツール。生活習慣や検診項目など10問以内の簡単な設問に回答するだけで、今後10年間の疾病罹患リスクが診断できる。「がんと循環器の病気リスクチェック」を公開して以降、男性を対象とした「大腸がんリスクチェック」「脳卒中リスクチェック」「5つの健康習慣によるがんリスクチェック」「胃がんリスクチェック」の全5種類を公開している。