2023.12.26 損保協会 定例会見 不正2事案の具体的な再発防止策示す、自然災害補償ギャップ縮小へメッセージ発信

損保協会は12月22日、業界紙向けの定例記者会見を行い、前日に行われた新納啓介協会長(あいおいニッセイ同和損保社長)の会見の内容を報告した。新納協会長ははじめに、保険料調整行為、およびビッグモーター社(以下、BM社)による保険金不正請求問題について謝罪し、これらの問題の再発防止策として同協会が現在行っている取り組みと、今後推進していく施策について説明した。また、11月に日本で初開催された保険監督者国際機構(IAIS)の年次コンファレンスおよびサイドイベントに参加し、自然災害に関する補償ギャップの縮小に向けてメッセージを発信したことを報告した。(本日付2~3面に新納協会長ステートメント全文を掲載)

冒頭、新納協会長は保険料調整行為、およびBM社による保険金不正請求問題について「お客さま、ならびに関係者の皆さまにご迷惑とご心配をお掛けしていることをあらためて心よりお詫び申し上げる」と謝罪した。
続けて、「これらの問題によって損保業界への信頼は毀損(きそん)していると言わざるを得ない」とし、損保業界の一日でも早い信頼回復を目指して、同協会では、保険料調整行為関連では、これまでに取り組んできたコンプライアンス・プログラムの改定などの他に①ルール面での整備②会員各社や代理店向けの啓発―の2点を推進すると述べた。
①では、「損害保険会社の独占禁止法遵守のための指針」を改定し、同法遵守に関して会員各社が策定するルールの前提となる基本的な考え方を記載する、その他、同協会「行動規範」を改定し、「独占禁止法遵守」を明記するなどの方針を示した。
②では、会員会社向け「独占禁止法遵守に係るコンプライアンス・セミナー」を2024年度以降も毎年開催し、専門家による損保実務に即した独占禁止法の留意点等について解説を行う予定であることなどを発表した。
一方、BM社による保険金不正請求関連では、11月下旬に、会員各社における顧客対応や不正請求対策を支援する取り組みを示すリリースを配信した他、今後は募集面での対策として、損保一般試験の教育テキストを改定し、不祥事件等に関する学習内容を拡充させる(24年4月テキスト改定、同年7月の試験より適用)ことなどを明かし、引き続き不正請求の防止等に努めるとした。
次に、就任時に掲げた取り組みの進捗として、「アジア各国における損害保険事業の発展に向けた貢献」に関連し、11月に日本で初開催されたIAISの年次コンファレンスおよびサイドイベントに参加したことを報告した。
サイドイベントでは、自然災害に関する補償ギャップの縮小に向けて、「Availability(保険の入手可能性の確保)」「Affordability(手頃な価格での保険提供)」「Awareness(リスク認識の向上)」の三つの「A」を基にした取り組みが必要であるとメッセージを発信し、その上で「Awareness」における同協会の取り組みとして、「ぼうさい探検隊」や中高生向けの保険教育等を紹介したと述べた。
最後に、「保険料調整行為、およびBM社による保険金不正請求問題で被害を受けられたお客さまへの対応に誠意をもって取り組むとともに、急務となっている損保業界の信頼回復に向け、これらの問題への対応をターニングポイントとし、二度と同じ過ちを繰り返さないよう強い決意をもって再発防止への対策を進める」とあらためて強調した。
その後は、前日の会見の質疑応答で新納協会長が記者からの質問に回答した内容が発表された。質問は保険料調整行為に関する内容が中心となった。
「損保大手4社等が公正取引委員会による立ち入り検査を受けたことをどのように受け止めているか」との質問には、「この機をターニングポイントとし、顧客や代理店への行き過ぎた本業協力によるビジネス獲得などの業界慣習を見直し、正すべきところは正す」と述べた上で、保険の補償内容や価格、付帯サービス等を正面から顧客に提案し、顧客に安心、安全を届けるための取り組みを業界を挙げて推進するとした。
「保険料調整行為が起きた原因は何か」との質問には、「原因は多々あるが、会員各社や代理店に対し、独占禁止法に対する教育が不十分であったこと、また、入札対応や他社社員との接し方についてのルールが未整備であったこと、さらに、それらのチェック体制、検知機能が不十分であったことなどが挙げられる」と回答した。
「過度な営業協力を減らすために、今後、損保業界全体としてはどう対応していくのか。その中で、損保協会はどのような役割を果たしていくのか」との問いには、「ステートメントの中にも記載しているが、共同保険の引受けに関し、会員各社がルール検討に当たって留意すべきポイントを明確化し、24年3月ごろをめどに会員各社で共有することを目指している」と述べ、これによって会員会社の行動の変革を促していくとした。