2023.12.22 東京海上日動 社長交代で記者会見、城田宏明氏が新社長に 「お客さま起点で徹底的に考え抜く会社」目指す

東京海上日動は12月20日、東京都千代田区のトラストシティカンファレンス・丸の内で記者会見を行い、城田宏明執行役員営業企画部長が来年4月1日付で新社長に就任することを発表した。広瀬伸一社長は同日付で会長に、小宮暁会長(東京海上ホールディングス社長・グループCEO)は取締役になる。併せて、東京海上HDでは、来年6月下旬の定時株主総会日付の役員人事として、取締役の広瀬氏の退任と、城田氏の取締役就任が内定したことを明かした。

記者会見には小宮氏、広瀬氏、城田氏が登壇した。
冒頭、小宮氏がビッグモーターの不正請求問題や保険料調整事案について謝罪した。続いて社長交代の理由について小宮氏は、①東京海上日動を取り巻く事業環境の変化が極めて大きく速く、持続的に成長・安定させるためには、同社自身が大きく速く変わらなければならず、取り組みや改革を一層力強く進める必要があった②東京海上グループのトップであるホールディングスの社長と、グループ中核会社である東京海上日動の社長が慣例に基づいて就任後6年で同時に交代することに対して、グループ一体経営や経営の継続性の観点から避けるべきだと考えていた―の2点を挙げた。
城田氏については、営業各部門や広報部門などさまざまな経験を積んでおり、社員の力をしっかりと結集して顧客やマーケット、第一線の社員の視点をもって前例にとらわれない変革をチャレンジ・実行できる人物と評価。また、明るく楽天的な要素があり、社内でも信頼が厚く、人心を掌握しながらのマネジメントにも長けていると述べた。
次にあいさつした広瀬社長は、ビッグモーターの不正請求問題や保険料調整事案について謝罪し、「全容と真因を究明して、二度とこのような事態を起こさないよう再発防止策を実施するとともに、お客さま基点でビジネスモデルを見直していくことで社会やお客さまからの信頼の回復に努めたいと思っており、私はこれらの課題に対して決して背を向けることなく、来年4月以降も会長としてガバナンスの立場から信頼回復の取り組みを見届けていく決意をこの場で皆さまにお伝えさせていただきたい」と述べた。また、社長就任以降の5年間を振り返り、新型コロナウイルスの感染拡大への対応、急速に発展したデジタル化の推進、自然災害やサイバー、ヘルスケアといったさまざまな社会課題の解決に向けた取り組みなど、新たな商品やサービスの提供を通じて歩みを進めてきたと説明した。
最後にあいさつした城田氏は、ビッグモーター問題と保険料調整事案についてお詫びを述べた上で、社長就任後にはまず、顧客起点でこれまでのビジネスモデルを真摯に見直し、信頼回復に向け取り組んでいく必要があるとし、「お客さま起点で徹底的に考え抜き、お客さまや地域社会の課題を解決し、お客さまに対する価値を提供し続ける会社、そして、社員・代理店がお客さまや社会からの信頼を得て、前向きな明るさと厳しさをもって活動し、多様性や人の力を競争優位の源泉とする会社を目指して精一杯努力していきたい」と述べた。
続いて質疑応答が行われた。ビッグモーター問題と保険料調整事案に質問が集中し、社長交代と一連の問題との関連について質問を受けた小宮氏はこれを否定し、「同時交代することのリスクを避けたいということと、東京海上日動が変革に向けた、あるいは成長に向けた挑戦のギアを上げて加速したいというのが社長交代の理由で、足元で起こっている問題がなくても今回のタイミングでの人事は決めていた」と述べ、1年ほど前から社長交代を考え、変革の実行力を持ち、社員と一緒に推進していける人物として徐々に城田氏がふさわしいと考えるようになったことを明かした。
また、保険料調整事案の背景や、新社長としてどのような対策を打つのかを問われた城田氏は、前日同社に入った公正取引委員会による立入検査に全面的に協力する一方、同社が設置した特別調査委員会による真因分析の調査が進んでおり、現時点で詳しく話せる段階ではないとした上で、「共同保険の事務などでは保険会社の営業担当者同士が接触する機会が多く、経営として不適切な行為が発生し得るリスクについて認識が不足していたと私自身反省している。営業現場で日常の取り決めをする中で独占禁止法に関する知識などを忘れ、慣習的なことに走ったということはあり、その一方で経営としてそうしたことを指示して防止することができなかったことに責任を感じており、これから調査委員会での真因分析が明らかになったところでよりしっかりと対策を打っていきたい」と回答した。
【城田宏明(シロタ・ヒロアキ)新社長の略歴】神奈川県出身。1992年3月成蹊大学法学部卒業。同年4月東京海上火災保険㈱入社、2016年4月東京海上日動火災保険㈱広報部部長、17年4月広報部長、20年4月グローバル経営人材育成プログラム「Global Leadership Pathway」参加(東京海上日動火災保険㈱理事)、21年3月理事営業企画部部長、4月理事営業企画部長、22年4月執行役員営業企画部長(現職)。