2023.11.28 IAIS年次総会・コンファレンス開催 東京に世界の保険監督者200機関が参集、プロテクションギャップなど議論

保険監督者国際機構(以下、IAIS)は11月9日、10日の2日間にわたり、東京都港区のヒルトン東京お台場で、2023年年次総会および年次コンファレンスを開催した。また、11月9日には金融庁の主催でサイドイベント「JFSA High-Level Dialogue: The role of insurance in building a resilient society」が開催され、自然災害に係るプロテクションギャップへの対応やサステナブル/トランジションファイナンスの推進等、持続可能な社会の構築に向けて保険が果たす役割について議論が行われた。

保険監督者国際機構(International Association of Insurance Supervisors:IAIS)は1994年に設立され、事務局はスイス・バーゼルの国際決済銀行(BIS)内にある。世界の各国・地域の保険監督当局等の約200機関(メンバー)で構成され、日本は1998年からメンバーとして参加している。IAISは、①効果的かつ国際的に整合的な保険監督の促進による保険契約者の利益および保護に資する公正で安全かつ安定的な保険市場の発展と維持②国際的な金融安定化への貢献―を目的としている。
【年次総会・コンファレンス】
9日午前に、IAISの全メンバー(当局者のみ)が参加する年次総会が開催され、その際に金融庁の有泉秀金融国際審議官が執行委員会の議長に就任した。同日午後から民間参加者も交えた議論の場として行われた年次コンファレンスには、世界各国から当局・民間保険会社など合わせて400人以上が参加した。コンファレンスの冒頭では、岸田文雄内閣総理大臣が開会あいさつを行うとともに、鈴木俊一金融担当大臣のビデオメッセージによる開会あいさつが流された。今年の年次コンファレンスでは、自然災害に係るプロテクションギャップ、保険セクターを取り巻くリスク、顧客本位の取り組み、気候変動への対応、国際資本基準(ICS)といったテーマについて議論が行われた。
【サイドイベント】
同じく9日に金融庁の主催で行われたサイドイベント「JFSA High-Level Dialogue: The role of insurance in building a resilient society」では、金融庁金融国際審議官の有泉氏がモデレーターを務め、欧州保険・企業年金監督局(EIOPA)チェアパーソンのPetra Hielkema氏、国際保険協会連盟(GFIA)プレジデントのSusan Neely氏、生保協会の清水博会長、損保協会の新納啓介会長がスピーカーとして登壇し、自然災害に係るプロテクションギャップへの対応やサステナブル/トランジションファイナンスの推進など、持続可能な社会の構築に向けて保険会社や監督当局が果たすことのできる役割について議論を行った。サイドイベントには、30を超える国・地域から、当局・民間合わせて150人以上が参加した。
同ダイアログで生保協会の清水会長は、生命保険業界がサステナブルファイナンスを推進するに当たっての「ESGインテグレーション」「投資先企業とのエンゲージメント」「トランジションファイナンス」の3点について説明を行った。ESG要素を投資判断に組み込む「ESGインテグレーション」については、投資先企業のESG取り組みが長期的な企業価値向上に資することが重要だとし、「投資先エンゲージメント」については、生命保険会社は長期的視点に基づいて企業との対話を実施する必要があるとした。「トランジションファイナンス」については、国・地域の特性を踏まえつつ、社会全体でネットゼロの実現を目指すことが必要との考えを示した。
損保協会の新納会長は、自然災害補償ギャップの縮小に向けて、「三つのA(Availability, Affordability, Awareness)」が鍵になると出席者に向けて発信し、特にAwareness(リスク認識)の重要性に言及。その具体的な好事例として、ぼうさい探検隊(若年層向けの防災教育プログラム)や中高生向けの保険教育などの損保協会の取り組みを紹介した。また、教訓として「people do forget(記憶は風化する)」を挙げ、社会のリスク認識を高めるためには世代から世代へ過去の災害の出来事を語り継いでいくことが重要だと強調した。補償ギャップ縮小に向けた官民の役割分担については、保険会社は顧客により近い立場でリスク認識の向上を行い、顧客の防減災に向けた取り組みをサポートすべきとの考えを述べた。
サイドイベント実施後には、同会場内でGFIA主催(損保協会、生保協会共催)のネットワーキングディナーブッフェが催され、過去最多となる官民の関係者約260人が出席した。ディナーブッフェは会合参加者同士がネットワーキングを行う場として例年実施されているもので、コミュニケーションの促進やおもてなしの観点、また日本文化への理解を深めてもらうためのアトラクションとして、けん玉や折り紙の体験ブース等が設置され、海外参加者から好評だった。また、会場には生保協会・損保協会が作成した刊行物・広報物や業界の報告書を展示するブースも設けられ、日本の業界や両協会の取り組みのアピールも行われた。