2023.10.25 かんぽ生命 一時払普通終身の取扱いを届出、郵政民営化委は「調査審議不要」と判断

かんぽ生命は10月2日、郵政民営化法(平成17年法律第97号)第138条の2第1項後段の規定に基づき、金融庁長官および総務大臣に対し、新たに保険料の払込みを一時払とする等の普通終身保険の引受けを行うことについて届出を行ったと発表した。2024年1月以降の取扱開始を予定している。郵政民営化委員会は本件について、調査審議を行う必要はないと判断した。

かんぽ生命は、マイナス金利後の予定利率の引き下げにより、中高齢層の顧客が既存の終身保険に加入した場合において、一定期間経過後に死亡した際に保険料払込総額を上回る死亡保障の提供ができていない場合があり、結果として死亡について遺族への金銭的な保障の観点で十分に応えることができていないという課題があるとして、この課題を解消するため、新たに保険料の払込みを一時払とする等の普通終身保険の引受けを行うとしている。
届出を行った一時払終身保険の保障内容は、被保険者の死亡時期に応じて死亡保険金を支払うもので、(ア)被保険者の死亡が基本契約の契約日からその日を含めて5年以内のとき、一時払保険料額と基本契約の積立金の額のいずれか大きい額を死亡保険金受取人に支払う(イ)被保険者の死亡が基本契約の契約日からその日を含めて5年を経過した後であるとき、基準保険金額を死亡保険金受取人に支払う―というもの。
重度障害による保険金の支払および保険金の倍額支払は取り扱わない。
保険期間は終身で、一時払のため保険料払込期間はない。
保険金額の制限は、被保険者1人につき、満16歳以上で加入する場合は1000万円を上限とする(被保険者が満55歳以上である場合で定期保険等に加入する場合は800万円が上限)。ただし、満20歳以上満55歳以下の被保険者について、一定の条件(契約日を含めて加入後4年以上経過した保険契約がある場合など)の下に累計で2000万円まで加入できる。この基本契約の限度額は、旧簡易生命保険契約と通算する。
医師による被保険者の診査および被保険者の健康状態の告知は不要。
基本契約の解除、保険契約者による解約、保険金額の減額変更、死亡保険金の免責事由の該当のいずれかの場合において返戻金があるときは、同社の定める計算方法により返戻金を支払う。契約者配当金も同社の定める方法により計算して支払う。
なお、現行の普通終身保険(定額型)は、保険料を所定の年齢まで月々払い込むもので、死亡保障に加え、重度障害による保険金の支払および保険金の倍額支払も取り扱う。また、告知も必要。一時払終身保険発売後もこの普通終身保険(定額型)の販売は継続する。

【郵政民営化委員会の判断】
郵政民営化委員会では10月3日に金融庁・総務省からかんぽ生命からの届出についての通知を受け、届出のあった新規業務(一時払終身保険)について、「かんぽ生命の新規業務に関する届出制の運用に係る郵政民営化委員会の方針(令和3年10月)」等にのっとり、かんぽ生命から提出された収支の見通し等の書面を基に調査審議が必要かどうかを審議した結果、今回届出のあったかんぽ生命保険の新規業務は、他の生命保険会社との適正な競争関係や利用者への役務の適切な提供を阻害すると認められる事情はなく、利用者利便の向上に資するため、調査審議を行う必要はないと10月12日に判断した。