2023.09.14 東京海上日動/損保ジャパン 貿易情報連携プラットフォーム商用利用開始、トレードワルツとシステム連携

東京海上日動と損保ジャパンは8月30日それぞれ、㈱トレードワルツ(東京都千代田区、小島裕久代表取締役社長)による貿易情報連携プラットフォーム「TradeWaltz(R)」に保険機能が実装されたことに伴い、同月から商用利用を開始したと発表した。

TradeWaltzは、貿易書類を電子上で一元的に管理できる貿易情報連携プラットフォームで、情報の改ざんが難しいブロックチェーン技術の活用により、安全に一気通貫で貿易手続きを完全電子化するもの。すでに、共通カテゴリで「通知・メール」「電子承認」「アーカイブ」、契約カテゴリで「P/O送付」「契約締結」、L/Cカテゴリで「接受」「保管」、輸出通関カテゴリで「輸出船積依頼」「輸出許可書保管」、輸送カテゴリで「Booking依頼」「B/L発行依頼」「B/L保管」、決裁書類カテゴリで「決裁書類作成」「決裁書類送付」、輸入通関カテゴリで「輸入荷捌依頼」「輸入許可書保管」などがリリースされており、保険カテゴリについては、8月から「保険証券」「デビットノート接受、保管」がリリースされ、「デビットノート発行依頼」が10月からリリースされる予定となっている。
東京海上日動によると、同社のシステムをTradeWaltzと連動させることで、顧客に紙またはPDFで送っていた保険証券をデジタルデータ化し、TradeWaltz上で提供することが8月から開始された。同社の顧客が保険証券情報をデータとして取得することで、従来発生していたアナログな事務作業の削減が可能となり、顧客の業務削減・生産性向上に寄与している。例えば、銀行がTradeWaltzと連携している場合、保険証券への裏書きや銀行買取のための証券送付といった作業を大幅に省力化することができるようになるという。
また、デビットノートもデータ化されるので、税関へのデビットノートのアナログ送付や税務調査に備えた書類保管なども不要となることが今後想定されるという(TradeWaltz上で電子帳簿保存法対応データとして格納されることが予定されている)。
東京海上日動では12月から、同社の顧客がTradeWaltzを利用すると、データ化されたインボイス(商業送り状)や運送書類といった貿易関連情報が保険申し込み用のデータとしてTradeWaltzから東京海上日動のシステムに自動で連動することも予定しており、顧客自身による保険申し込みの必要情報の転記が不要となる。
また損保ジャパンでも、今後は顧客が自社のシステムから損保ジャパンのインターネットを通じ、外航貨物海上保険の申込み手続きと保険証券等の印刷ができるシステム「MARINE My Page」へより効率的なデータ連携を可能とするAPI開発や、APIへ接続するためのサポートシステムの提供など、安心・安全な物流をサポートしていくとしている。
東京海上日動海上業務部貨物業務グループの新谷哲之介専門次長は「弊社は、保険の側面から顧客の貿易実務デジタル化を進めてきたが、今回弊社のシステムがTradeWaltzとつながることにより、貿易関係者は網羅的なデジタル環境を利用することが可能になる。今後はトレードワルツとともに、国際的に保険データが流通するための基盤整備なども行っていく」とコメント。また、損保ジャパン海上保険部の中村隆久部長は「貿易業務のデジタル化を推進するTradeWaltzに、損保業界としていち早く接続を果たせたことをうれしく思う。これを機に、長きにわたり紙文化が続いてきた貿易業界に一石を投じ、顧客の業務を大きく変える一助になればと考えている」と述べている。
トレードワルツの染谷悟執行役員COO、CMOは「TradeWaltzは業界横断型プラットフォームであるために、つながる業界・企業が増えるたびに価値が増していくが、今回の発表により荷主―物流会社―税関―船会社―銀行―保険会社までつながったので、今後はつながるデータや機能をさらに拡充していく」とコメント。
東京海上日動とトレードワルツは、2016年にNTTデータとともに、L/C、B/L、インボイス、保険証券のデータをブロックチェーン上でデータ化し、かつ権利移転ができるかという実証を行った。その後、NTTデータが商社・海運・銀行・保険の各社に呼び掛けて13社による貿易コンソーシアムを立ち上げ、東京海上日動を含むそのうちの複数の会社が、トレードワルツ社設立に際して初期株主として参画している。東京海上日動はトレードワルツの立ち上げ当初から、開発・営業・導入支援のメンバーの出向や、非常勤取締役の就任による協力を行うとともに、貿易コンソーシアムの中で「規制改革WG」をリードし、貿易書類のデジタル化に際して法改正要望の多かった電子船荷証券のための立法取り組みを推進したという。
また、損保ジャパンは、17年8月に貿易コンソーシアムが立ち上がった際の初期メンバーで、貿易コンソーシアムの活動を通じ、貿易実務に即した実証実験や試行運用などにも積極的に参加してきた。同社もトレードワルツ社設立時から初期株主として参画するとともに、事業開始当初から出向派遣している営業・導入支援メンバーと連携することで、TradeWaltzのサービスを積極的に紹介し、その発展に寄与。今年5月にトレードワルツAPAC駐在員事務所と損保ジャパンのグループ会社であるSompo Insurance Singapore社が協力し、広くアジア地域を対象として貿易デジタル化の推進を目的としたウェブセミナーを開催するなど、海外においても連携を強化している。