2023.07.26 生保協会 清水新会長が就任会見、希望ある持続可能な安心社会を実現 軸となる三つの取組方針示す

生命保険協会の第61代協会長に就任した清水博氏(日本生命社長)が7月21日、東京都千代田区の生保協会会議室で就任会見を行い、所信を表明した。少子高齢化や人口減少等の構造変化とともに、先端技術の進歩・普及やコロナ禍を契機としたライフスタイル多様化など、社会全体が大きく変化していることに加え、気候変動への対応など持続可能な社会の実現に向けた取り組みが世界的な潮流になっていることを踏まえ、2023年度は、①顧客本位の業務運営の推進②地域社会における課題解決③地球環境の課題解決―の三つを軸に取り組みを進める方針を示し、「希望あふれる持続可能な安心社会の実現に向けて、生命保険事業の使命を果たすために、1年間全力で取り組む」と述べた。(2面に清水新協会長の「所信表明」全文掲載)

会見で清水協会長はまず、これまでの生保業界の活動について触れ、関東大震災や世界大戦に加え、東日本大震災などの大規模自然災害や新型コロナウイルス感染症が世界的に流行した最中でも相互扶助の理念の下、一貫して顧客に安心を提供し、国民生活向上の取り組みを促進してきたと振り返った。
現在は、全国で24万人を超える営業職員や約8万店の代理店等のネットワークを通じて保険商品を提供し、新型コロナウイルス感染症の入院給付金等の請求に対して、合計で1100万件、1兆2000億円を上回る給付金を支払うなど、社会保障制度を補完するという生保事業の使命を果たしてきたと述べた。
次に、23年度の取り組みの一つ目の軸となる「安心社会」実現に向けた顧客本位の業務運営の推進に資する取り組みについては、今後も生保業界が顧客に安心を届け、社会に役立ち続けるには会員各社による顧客の最善の利益を追求する「顧客本位の業務運営」の推進が最重要となるため、「営業職員チャネルのコンプライアンス・リスク管理態勢の更なる高度化にかかる着眼点」を踏まえ、引き続き会員各社の取り組みを後押しする考えを示した。
また、パンデミックでの経験を今後に生かすために、コロナ禍での業界取り組みを報告書として取りまとめることに加え、より効果的に若年層の金融リテラシー向上を図るために、業界の垣根を超えた他業態との連携・協力体制の強化を目指すとした。
二つ目の軸となる「希望あふれる社会」実現に向けた地域社会における課題解決に資する取り組みについては、少子化社会に対応した生保協会・会員各社の取り組みを取りまとめて、業界の果たす役割を発信することに加え、子育て支援や子どもの権利保護等に関する内容をまとめた研修教材等を作成し業界内外に発信するなど、生保協会・会員各社の地域社会に根差した社会貢献取り組みの情報発信を行うと説明した。
また、会員各社のデジタル化への取り組みを後押しするために、分散型デジタル社会に関する調査や勉強会を通じた情報提供を行うとした。
三つ目の軸の「持続可能な社会」実現に向けた地球環境の課題解決に資する取り組みについては、ESG投融資やスチュワードシップ活動を通じた投融資先企業の企業価値や持続可能な経済成長への貢献に向けた取り組みを推進していくと説明した。気候変動や生物多様性等がテーマの最新動向等を反映したハンドブックの作成や勉強会を実施し各社を後押しすることに加え、会員各社との対話を通じて持続可能な社会の実現に資する取り組みを共有するとともに、国際会議の機会を捉えて業界全体の取り組みについて主体的に情報発信していく考えを示した。
この他、生保業界の健全な発展に向けた基盤整備にも継続して取り組むとした。税制面では、国民が必要とする多様な生活保障の準備を支援・促進するために、生命保険料控除制度の拡充を要望することに加え、日本の生保事業の特性を踏まえた国際金融規制や国際会計基準、国内規制のあり方について検討を進め、積極的に意見発信をしていくと述べた。
また、かんぽ生命における業務範囲の拡大や加入限度額の引き上げ等について、中長期的に消費者利益を向上させるためには公正な競争条件の確保が不可欠との考えから、市場への影響等を見極めながら、必要に応じて意見表明する方針を示した。