2022.07.27 日本航空保険プール 21年度提供保険料14億円減の94億円、航空需要低迷で事故件数も低水準に

日本航空保険プールは7月13日、第235回航空保険プール委員会を開催し、一般概況報告とともに2021年度プール運営費決算報告など各議題を審議・承認した。プール委員会は新型コロナウイルス感染の影響を考慮し前回に続き書面開催となった。21会計年度のプール提供(グロス)保険料は、前年度の約108億円から約14億円減少し、約94億円(前年比86.9%)となった。また、委員長・副委員長選挙の結果、委員長に松田誠太氏(東京海上日動常務執行役員)、副委員長に工藤成生氏(三井住友海上取締役常務執行役員)および齋藤滋夫氏(損保ジャパン副社長執行役員)が選出された。
第235回航空保険プール委員会では国際マーケットの動向として、次の報告が行われた。
2001年の米国同時多発テロの影響で急激にハード化したエアライン分野の機体・賠償責任保険の料率水準は、その後、09年に発生したエールフランス機の大口事故直後の一時的なハード化という一部例外を除き、航空機の安全性向上も追い風となり一貫してソフト化傾向が継続してきた。
しかし、17年以降、大口自然災害の発生により再保険マーケット全体が徐々にハード化に転じる動きを見せると、18年10月に発生したライオン・エア610便墜落事故(死亡乗員・乗客数189人)、19年3月に発生したエチオピア航空302便墜落事故(死亡乗員・乗客数157人)を契機に、航空保険マーケット全体で保険料率が顕著に上昇する局面に移った。
その後、21年上半期まではレートアップの状況が続いたが、下半期になるとハード化の動きが落ち着いた。しかし、22年2月末に始まったロシアによるウクライナ侵攻に伴い、航空保険の事故報告もされており、今後のマーケット動向については不確定な状況にある。
21年の民間航空機事故の発生件数は44件で、このうち死亡事故は11件だった。20年に引き続き、21年も新型コロナウイルスの影響で航空需要は回復せず、事故件数も低い水準だった。大きな死亡事故としては、1月に発生したスリウィジャヤ航空(インドネシア、死亡乗員・乗客数62人)の墜落事故が挙げられる。
IATA(国際航空運送協会)の発表によると、21年の総旅客数は19年対比47%と20年より若干回復したものの、新型コロナオミクロン株の流行により引き続き厳しい年となった。22年は、各国の入国制限の撤廃や緩和により19年対比83%まで回復すると予想されている。
21年暦年ベースの宇宙保険マーケットは、19年以降のマーケットハード化が一巡したものの、打ち上げ保険手配件数の若干の増加により保険料は昨年対比で増加した。一方で、大口の保険金支払いはSXM―7の全損事故1件のみで、マーケット全体としては収入保険料が支払保険金を上回り、経費等を加味しても収益確保に至る結果となった。