2020.09.29 ■損保協会定例会見 業務の共通化・標準化推進、ブロックチェーン技術用いて検証へ[2020年9月18日]

  損保協会は9月18日、業界紙向けの定例記者会見を行い、第8次中期経営計画に掲げた重点課題である業務の共通化・標準化の推進について、会員8社参加の下、NECと協力してブロックチェーン技術を用いた共同保険の契約情報交換に関する検証を進めることを報告した。また、9月17日に日銀記者クラブで行われた広瀬伸一協会長の会見内容では、新型コロナウイルス感染症に対する取り組みを引き続き実施していく考えを示した。
 定例記者会見では、業務の共通化・標準化を推進するため、7月に同協会内に設置した「事務検討特別部会」において、控除証明書発行機能の共同化に関する具体的な要件やシステム開発を進めていることを説明した。
 現在書面で行っている自動車保険や火災保険などの共同保険(注)の事務効率化に向けては、9月からNECと協力してブロックチェーン技術を用い契約情報交換に関する共同検証を実施するとして、まずは有効性の評価や課題の洗い出しを行う考えを示した。
 具体的には、ブロックチェーン技術のデータベースを活用して書面を使わずに契約情報の交換を行い、その迅速性・正確性・効率性を共同で検証する予定だとし、「これによって年間数十万件に及ぶ契約情報をペーパーレス化するとともに、データでの情報交換により各社の契約計上業務も大幅に効率化できる。新しいテクノロジーの導入による業界横断での業務共通化・標準化を通して、社会インフラとして損害保険が持つ機能と役割を発揮すべく変革に努めていく」と語った。
 日銀記者クラブでの会見で広瀬協会長は、新型コロナウイルス感染症に対する取り組みでは、会員各社において商品開発や保険契約の継続手続き、保険料の払い込みを猶予する措置を実施していることを報告した。自然災害対応では、ウェブ上での事故・経過報告などにより感染防止を図り、リモートによる損害評価と全国規模での人員のバックアップ体制を整えていくと述べた。
 新型コロナウイルス感染症の影響により経済活動の停滞が余儀なくされた場合の事業中断保険に関して、契約者有利の判決を下した英国のFCA(金融行動監視機構)の動向を注視しながら、その影響が再保険マーケットに与える影響を精査していくとした。
 20年7月に起こった九州の豪雨については、事故受付件数が約3万2000件、支払保険金が約684億円近くに達しているが、甚大な被害をもたらした一昨年・昨年の災害と比較して事故受付件数は減少するとの見方を示した。
 定例会見ではこの他、オンライン授業の際に冊子が手元になくても分かりやすく授業が実施できるように「防災副教材」のパワーポイント版を作成したこと、10月3日にオンライン上で開催される、内閣府などが主催する「ぼうさいこくたい(防災推進国民大会)2020」に参画することなどを報告した。
 (注)一つの保険契約を複数の保険会社で引き受けるもの。年間数十万件に及ぶ契約情報を引受保険会社間で書面で交換し、各保険会社の契約計上業務を行っている。