2018.09.20 AIG損保 災害時の支払い対応強化 被災地契約者に請求勧奨

AIG損保は、6月から7月にかけて発生した「大阪府北部地震」や「平成30年7月豪雨(西日本豪雨)」での保険金支払い対応を強化した。地図ソフト上に契約者所在地や被害範囲のデータなどを重ね合わせるツール「Flood Lens(フラッド・レンズ)」を開発し、保険金支払いが見込まれる顧客に請求勧奨を行った。また、支払い手続きの簡素化や早期支払いのための制度変更、ⅠTを活用したコミュニケーション手段の導入などにより、保険金支払いの平均所要日数が半分に短縮した。災害時の対応で差別化を図り、顧客満足度をより一層高めていく考えだ。

 「フラッド.レンズ」は、災害地域の契約者データや被災範囲のデータなどを地図上で照合するツール。西日本豪雨の被災地域のデータには、国土地理院が公表した岡山県倉敷市真備町と愛媛県大洲市の浸水地域を推定するウェブ地図を活用した他、各自治体が出しているハザードマップを用いた。被災した可能性のある顧客を特定することで、同社から積極的に連絡して調査立ち会いのアポイント取りや請求勧奨を行った。契約者所在地が視覚的に把握できるので、同じ地域の訪問先をまとめるなど、立ち会い作業の効率化にもつながった。
 また、今回の災害では、電話以外にSMS(ショート・メッセージ.サービス)を使って請求勧奨や立ち会いのアポ取りを実施。被災地域に所在地があってまだ連絡がなく、保険加入時に携帯電話番号を記入した契約者に対して、被害状況の確認や訪問日時の予約を依頼するメールを一斉送信した。携帯電話に付帯したSMSであれば、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のように事前登録や専用アプリのインストールの必要がなく、また、所在地から避難した契約者であっても、時間を問わずコミュニケーションを取りやすいなどのメリットがある。
 保険金の支払い手続きについては、新たな制度をいくつか導入した。火災保険金などの支払いの場合、修理見積書を取得するまでに時間がかかり、その分、支払いが遅れることがあるため、保険金支払い対象事案であることを確認するなど一定の条件を満たし、契約者が要望した場合、損害見込額の最大89%程度までを早期に前払いできるようにした。企業火災保険分野で既に実施している制度(企業火災では損害見込額の最大50%まで)を個人火災保険にも応用した。
 また、数年前から状況に応じて実施していた簡易査定を今回、正式な制度として導入。顧客の要望により、早見表で算出した概算額で損害認定した。保険金を支払った後に、見積書を基に確定精算することもできる。この他、書類取り付けの一部省略も行った。
 これらの取り組みで同社が西日本豪雨で事故報告から保険金支払いまでに要した平均日数は約2.5週間となり、鬼怒川の堤防決壊などで広範囲の水害をもたらした「平成27年9月関東・東北豪雨」の平均約5週間に比べて半分以下に短縮した。保険金を受け取った契約者から感謝の言葉が多く寄せられたという。
 同社損害サービス部門では、「今回の災害対応のプロセスは非常にうまくいったと思っており、今後発生する災害に対して、より対応力を上げていくとともに、当社が掲げる『アクティブ・ケア』の方針に基づき、お客さまに対してより役に立つ魅力的な商品、サービス、リスクコンサルティングを提供できるよう努力を重ねていきたい」としている。