2018.04.17 日本生命 グローバル投資 積極化、運用強化へ農地・ベンチャーなど

日本生命が海外投資ファンドへの投資を活発化させている。このほど、ハンコック・ナチュラル・リソース・グループ(HNRG社)が運用する海外農地投資ファンド(HNRG海外農地投資ファンド)に対する、1億1900万豪ドル(約100億円)の投資に続き、米国の資産運用子会社であるニッポンライフ・グローバル・インベスターズ・アメリカス・インク(NLGIアメリカス)が運用する海外ベンチャー投資ファンド「NLI Strategic Venture Investment Fund」(NLIファンド)に、9400万米ドル(約100億円)を投資することを相次ぎ発表した。同社は、中期経営計画「全・進―next stage―」(2017―20)で、ESG債等への投融資2000億円を目標に掲げており、環境保護や食の安定供給につながる海外農地投資ファンドへの投資もその一つ。フィンテック領域等の有力ベンチャーへの戦略的な投資も進めて資産運用を強化し、成長・新規領域への投融資額「4年で1.5兆円」を目指す。

 HNRG社は、マニュライフ・アセット・マネジメント・グループ傘下の運用会社。HNRG海外農地投資ファンドについては、日本生命にとって初の農地投資ファンドへの投資となる。対象となる農地として、小麦や大豆・とうもろこし、マカダミアナッツ、ブドウなどの農園を想定。オーストラリアの農地への投資から開始し、その他の国への投資についても順次拡大する。
 同社では、HNRG社が約30年にわたり蓄積してきた高い技術力やノウハウの下で運用される海外農地投資ファンドへの今回の投資は、食料の安定供給、農家の収入安定化、環境に配慮した農地運営等により、社会的課題である「食の安定供給」に寄与する取り組みと位置付けている。
 農地投資は、安定的な農作物の売上収入・農地リース料をベースとして、金融危機時も含め歴史的にトータルリターンは良好とされ、今後も人口増加に伴う需要の高まりなどから高い収益性が期待されるという。また、株や債券等の伝統的資産と相関性が低いことから、分散投資効果による運用資産全体の収益安定化も図れるとする。
 一方、日本生命は、1970年代から海外ベンチャーファンド投資にも取り組んでいる。2003年からはNLGIアメリカス等の海外運用拠点を活用し、継続的にベンチャーファンド投資を行う等、長年にわたって培ってきたシリコンバレーにおける強いネットワークと運用者選別能力を生かしながら、良好な運用実績を実現してきた。
 NLIファンドは、NLGIアメリカス等のネットワークも生かし、世界的に著名なYコンビネーターといったアクセラレーター(設立間もないベンチャー企業に経営指導等を行い、ビジネスを加速させる企業・団体)にアクセス。ビッグデータやAI技術の活用等により今後大きな投資機会が見込まれるフィンテックや、日本生命が注力している子育て支援やヘルスケア、高齢社会対応等の「保険+α」領域への投資を通じ、高い運用利回りの獲得を目指す。期待利回り(IRR)は20%以上としている。
 日本生命では、これまでも先端ITの活用を進めてきたが、本年度から新たに「イノベーション開発室」を設置。AI等の先端技術を事業推進・事業開発に積極的に活用する取り組みを加速・強化する方針だ。NLIファンドについても、高い利回りの確保に加えて、優良なテクノロジーやビジネスを有する企業へのアクセスを通じ、先端IT等の情報収集を積極的に進めていく。また、イノベーション開発室と連携を取り、収集した情報の活用・還元に加えて、フィンテックや「保険+α」領域の有力ベンチャー企業への戦略的な共同投資、協業、さらには新たな商品・サービスの共創を図り、保険契約者への投資収益+αの還元と社会的課題の解決を目指す。