2018.04.12 内閣官房IT総合戦略室「自動運転」大綱案、自賠法 運行供用者責任を維持

内閣官房IT総合戦略室が「自動運転に係る制度整備大綱(案)」の概要を3月30日に発表した。ITS・自動運転に係る国家戦略「官民ITS構想・ロードマップ2017」で17年度中にまとめるとしていたもので、重点検討項目の一つ、「責任関係」では、自賠法等の民事責任の在り方について、先に国土交通省の自動運転時の賠償責任に関する研究会でまとめられた内容が盛り込まれた。今後、早い段階で、政府のIT総合戦略本部の大綱として最終決定がなされる。

 大綱案(概要)では、自動運転が目指すものとして、①交通事故の削減や渋滞緩和等による、より安全かつ円滑な道路運送社会の実現②きめ細かな移動サービスを提供する、新しいモビリティサービス産業を創出③自動運転車による日本の地方再生④世界的な自動運転車の開発競争に勝ち、日本の自動車産業が、引き続き世界一を維持―と基本的考え方を位置付けた。
 そのため、検討の基本方針は、社会受容性や社会ニーズに基づいた事業者の創意工夫を促進すること、安全確保を前提としつつ、さらに早期の安全課題の発見と対応を促進すること、順次制度を見直すなど、自動運転を取り巻く環境変化に柔軟に対応すること―の3点を挙げている。
 重点的に検討する範囲と方向性は次の通り。
 ①「安全性の一体的確保」では、技術レベルの進展を踏まえ、一般車と同等以上の安全レベルを達成するとの方針の下、安全基準を技術レベルに応じ検討し、自動運転向け走行環境条件設定について関係省庁で連携し、客観的な指標として検討・策定するとした。当面は地域特性を勘案し、走行環境設定(運行・走行環境)で一体的に安全を確保する仕組みを構築。
 ②「安全確保の考え方(道路運送車両法等)」では、安全基準の策定において、日本の最先端の技術を世界に広げるため、引き続き国際的議論をリードしていくとした。その中で自動運転車が満たすべき安全性の要件(例として制御システムの安全性、サイバーセキュリティなど)を夏ごろをめどにガイドラインとして取りまとめる。
 ③「交通ルールの在り方(道路交通法等)」では、ジュネーブ条約に関する議論として関係各国と協調してリーダーシップを発揮し、世界最先端の技術の実用化を目指した交通ルールを検討。
 ④「責任関係」のうち、民事責任関係については、万が一の事故の際にも被害者救済が確実になされる枠組みを構築する。事故時の責任の明確化および事故原因の究明に取り組み、そのためのデータ取得・保存・活用についても検討する。これらの観点から、自賠法において、自動運転システム利用中の事故により生じた損害について、従来の運行供用者責任を維持する。自賠法において、保有者等が必要なセキュリティ対策を講じていない場合を除き、ハッキングにより引き起こされた事故の損害は政府保障事業で対応するとした。一方、刑事責任の判断のためには、自動運転車を市場化する際、交通ルール、交通事業に関する法制度等により、さまざまな関係主体に期待される役割や義務を明確にしていくことなどを踏まえて検討を行う。また、20年をめどにデータ記録装置の設置義務化やデータの記録機能、情報保有者の事故時の記録提出の義務の要否を検討する。
 その他に⑤「運送事業に関する法制度との関係」で、運送業者が社内に不在となる自動運転車で旅客運送を行う際に必要な措置の検討、なども挙げられた。