2017.12.22 金融行政の目標 明確化 金融庁検査・監督基本方針(案)公表

金融庁は12月15日、新しい検査・監督を実現するために基本的な考え方と進め方を整理した「金融検査・監督の考え方と進め方(検査・監督基本方針)」(案)を公表した。同方針は、金融モニタリング有識者会議が2017年3月に公表した報告書「検査・監督改革の方向と課題」を踏まえ、金融行政の視野を「実質・未来・全体」に広げ、国民の厚生の最大化への貢献という金融行政の究極的な目標の達成に、より効果的に寄与できる新しい検査・監督を実現するために整理したもの。金融行政の目標を明確化するとともに、ベスト・プラクティスの追求のための見える化と探究型対話を工夫していくこと、18年度終了後(19年4月1日以降)をめどに検査マニュアルを廃止することなどを取りまとめた。

 金融行政の究極的な目標は、企業・経済の持続的な成長を支え、また、国民の安定的な資産形成に寄与することを通じて、国民の厚生の最大化に貢献することと位置付けられる、とした。
 金融庁は発足から数年は、金融システムの安定、利用者保護、市場の公正性・透明性の確保に注力していたが、この究極的な目標を達成するためには、金融システムの安定と金融仲介機能の発揮、利用者保護と利用者利便、市場の公正性・透明性と市場の活力について、各目標のバランスの取れた実現を目指していくことが重要となるとし、その実現のため、金融機関が真に利用者のためになる良質な商品・サービスの提供を競い合い、利用者の成長、さらには金融機関自身の成長にもつなげていくという好循環を実現することが望ましいとした。そのために、検査・監督のアプローチを広げ、①金融機関が利用者に向き合い、おのずと高い水準を目指して努力を行うよう促す②将来を常に意識して議論する③検査・監督の基本的な考え方を整理する、とした。
 ①については、本来、利用者にとってより良い商品・サービスを提供する金融機関が選択され、全体の水準が向上する環境が望ましいことから、利用者が比較・選択できるよう、金融機関の取り組み開示等の充実を通じて「見える化」していく。金融機関が創意工夫しやすくなるよう、また、前向きに取り組めるよう、情報提供も含めて対話を行っていく。
 ②では、金融機関は足元での健全性確保や法令順守だけではなく、将来にわたって経営の持続性を確保したり、重大な問題発生を事前に予防することが求められるため、経済環境の変化等も踏まえ、金融機関のビジネスモデルの持続可能性を含め、将来を常に意識して議論していく。
 ③では、当局が一律のチェックリストで金融機関の行動の是非を判断するのでは、新しい検査・監督を実現することが難しいことから、今後は基本となる考え方を示し、金融機関の特性に応じた対応を行っていくため、検査・監督の基本的な考え方を整理していく。
 具体的には、今回、新しい検査・監督の方向を示した「金融検査・監督の考え方と進め方(検査・監督基本方針)案」を公表し、意見を求める。その際、金融機関の現状の実務を否定する意図はなく、今後より良い実務に向けた対話を行っていくための材料であることを丁寧に説明する。
 主要なテーマ・分野ごとのより具体的な考え方と進め方については、別途、分野別の「考え方と進め方」の形で示し、対話を行っていく。特に資産分類・償却・引当については、関係者や有識者からなる勉強会を開催し、来年夏をめどに考え方を示していく。
 チェックリスト形式の検査マニュアルは18年度終了後(19年4月1日以降)をめどに廃止する。資産分類・償却・引当についての形式的な基準を定めた検査マニュアル別表についても、担保・保証への過度な依存等を生むことから廃止する。
 金融庁側の思い込みなどで「悪しき裁量行政」に陥らないよう、組織のガバナンスを強化した上で、金融機関との対話の枠組みや、金融行政に対して外部からの提言・批判が反映される仕組みを整えていく。
 新しい検査・監督の在り方に必要な金融庁の組織改革や、財務局を含めた人材育成・確保を行っていく。
 今回の方針案は18年2月14日までパブリックコメントの手続きに付し、広く意見を求める。また、同方針案に沿って必要な態勢整備を進め、新しい検査・監督を実行に移し、その結果を同方針の改訂に反映していくとしている。