2017.10.05 第一生命 藤田保健衛生大学と糖尿病共同研究、予測モデルの構築成功

 第一生命と藤田保健衛生大学は(愛知県豊明市)このほど、2016年7月に開始した共同検討により、日本で圧倒的に罹患(りかん)者の多い2型糖尿病(以下「糖尿病」、注)の悪化を予測するモデルの構築に成功したと発表した。第一生命では今後、データ解析結果と予測モデルを保険事業や関連サービスへ応用することを検討していく。糖尿病の予防や改善など顧客の健康増進に向けたサービスの提供やより高度なリスク管理基準を設けることによる保険引受基準の拡大、新たな保険商品の開発などを目指す。

 予測モデルの構築に当たっては、藤田保健衛生大学病院電子カルテデータに記録されている匿名化された13万2210人(糖尿病患者6万4059人、糖尿病以外の患者6万8151人)の各種検査値や、従来の技術では解析が困難だった診療記録・栄養指導記録などのテキストデータ、継続通院患者の情報から把握できる時系列データ等に対し、日本IBMのWatsonテクノロジーを活用したデータ解析を実施。得られたデータから、予測モデルの構築に寄与する特徴量を抽出し、高い精度の予測モデルを構築したとしている。今回構築した予測モデルは、日本人の生活習慣等を踏まえた世界初の予測モデルとなる(藤田保健衛生大学調べ)。
 共同研究では、①「糖尿病腎症ステージ変化予測モデル」と②「HbA1c改善予測モデル」の二つのモデルを構築した。
 ①は、糖尿病の合併症の中でも悪化すると人工透析など治療に大きな負担がかかる糖尿病腎症にフォーカスし、その進行に関して予測するもので、糖尿病腎症の180日後の悪化・非悪化を予測する。同モデルは、検体検査等の結果を基に、腎症を進行レベルによって五つのステージ(第1期から第5期まで順に悪化)にラベル付けし、第1期の軽度な糖尿病腎症患者について、180日後の病状進行(ステージ変化)を高い性能で予測する。
 また、②は、糖尿病のさまざまな合併症の発症に影響が強いHbA1cの値にフォーカスし、患者指導を行った時点から180日後のHbA1c改善を予測するもの。各種検査値に加え、患者指導(主に栄養指導)テキストデータから患者の生活習慣や治療に対する意欲などを分析し、HbA1cの改善予測モデルを構築した。同モデルは、糖尿病患者に指導(主に栄養指導)を行った日から180日後のHbA1cの値が改善するか否かを高い性能で予測する。
 さらに、これらのデータ解析を進める中で、二つのモデルによる180日後の予測が非常に重篤な症状の長期的な発生率と関連するかどうかについて検討し、180日後の腎症の悪化が将来の透析導入や重篤な合併症の発症に関連することを見いだしたとしている。
 今後は共同検討で構築された予測モデルのさらなる精度向上、有効性の検証を行うことを目的に、臨床上の知見も踏まえ研究を継続していく。また、糖尿病患者の日々の食事や運動と体況の変化との相関を予測モデルに反映し、より詳細な治療方針や生活習慣へのアドバイスを提供するヘルスケアサービスの開発につなげるため、食事や運動の改善サポートを共同で実証していくことを予定している。
 藤田保健衛生大学では、従来人の手では解析できなかった多数の実臨床のデータを解析することで、より安全で効率の良い医療を提供する取り組みを目指しており、今回得られた成果は、疾病管理技術と指導水準の向上とに直接結び付くもので、より良い医療の実現に寄与するとしている。
 (注)2型糖尿病は体質(遺伝)や肥満・運動不足・ストレスなどをきっかけに、血糖値を下げる働きのあるインスリンの分泌量や効果が低下し十分作用しなくなることで、血液中のブドウ糖(血糖)が正常より多くなる病気。糖尿病には他に、膵臓のベータ細胞が壊れ、インスリンが全く分泌されなくなってしまう1型糖尿病などがある。世界的には糖尿病全体の約5%が1型糖尿病といわれており、生活習慣が関わる2型糖尿病とは、原因、治療が大きく異なる。