2017.09.27 東京海上日動 サイバーリスクに新サービス、ベンチマークレポートサービス開始へ

 東京海上日動は10月1日から、「サイバーリスク総合支援サービス」の新たなサービスとして「ベンチマークレポートサービス」の提供を開始する。同サービスは米国シリコンバレーを拠点とするサイバーリスクモデリング会社であるサイエンス社との戦略的提携契約によって実現したもので、東京海上日動のサイバーリスク保険に加入し、同サービスを希望する企業に対して、自社の客観的な情報に基づく分析結果や、リスク指標の業界内での位置を把握できる情報などをレポートとして無料で提供する。企業商品業務部の教学大介担当課長は「複雑で想定外のことが起こるサイバーリスクに対しては情報を取得することが重要。当社の保険を契約したことで顧客が的確に情報を収集し、サイバーリスクを低減できるように取り組んでいく」と話す。

 東京海上日動は、サイバーリスクに関するデータ収集やサイバーリスク評価手法のブラッシュアップ、サイバーリスク保険の引き受け・リスク管理能力向上などのためにサイエンス社と戦略的提携契約を結んだ。サイエンス社は、データの取得が難しいサイバーリスクに関して、世界中の多様な情報源からデータを収集し、独自のノウハウで分析することでサイバーリスク固有のモデルを構築。欧米では格付機関・保険業界などにソリューションを提供している。東京海上日動はこの提携によってサイエンス社から知見やノウハウの提供を受ける中で、顧客にもサイバーリスク関連の知識、顧客のリスク実態などの情報を提供してサイバーリスクへの理解を促していくこととし、サービス化の検討を始め、「ベンチマークレポートサービス」のリリースに至った。
 一般的に企業がサイバー攻撃を受ける要素として、ファイアウオールやオンライン決済システム、ウェブサイト、クラウドといったシステム面のセキュリティーの脆弱(ぜいじゃく)性等技術的要因に焦点が当たる。しかし、実際には人・プロセス要素として、企業内の従業員の感情やパスワード・ユーザーIDの管理体制、企業外における知名度や消費者の感情などがあり、これらも重要なファクターとして捉え、総合的に把握し、対処する必要があることから、「ベンチマークレポートサービス」はこうしたことを踏まえたサービスとなっている。
 同サービスの特長として、①顧客のリスク実態に即した分析が可能なこと②攻撃者の視点から顧客のサイバーリスクを多角的に分析すること③業界内における顧客のリスクのベンチマーク④顧客のリスク推移を定期的に把握可能なこと―が挙げられる。
 ①については、顧客の自己申告ではなく、活用インフラやURL情報、ネットワーク上の通信記録の状況など、客観的な外部情報に基づいてリスクを分析、得点化して顧客が外部からどのように見えているかといった観点で参考となるレポートを提供する。
 ②では、システム管理等の技術リスク指標に加えて、攻撃者のモチベーションなどの人的リスク指標にも焦点を当てて分析する。
 ③では、顧客が自社のリスク指標が業界内でどの位置にあるのかを客観的に把握し、今後のセキュリティー対策に役立てることができるようにする。
 ④に関しては、年1回、メールで送信する同サービスの活用によって変化の激しいサイバーリスクを定点観測し、リスク指標の推移を定期的に把握することで対策の立案等を可能にする。
 レポートではリスク概要として、総合リスク指標と、その内訳となる企業の組織とネットワーク内の弱点を表す技術的リスク指標、企業が攻撃者の標的となる可能性を表す人的リスク指標について、400点中の点数を示す。点数が高いほどリスクが大きいことを表す。
 また、技術的リスク指標、人的リスク指標のそれぞれに関して、自社の指標を同業他社と比較した分布や時系列推移をグラフを使って分かりやすく示す。教学氏は「同サービスによって企業は多角的・網羅的に情報を取得できるため、サイバーリスク対策を考える上での気付きを得ることができる。企業にとってはサイバーリスク対策の健康診断として活用してほしい」と述べる。
 東京海上日動は2015年2月、サイバーリスク保険の販売を開始。15年10月からスタートした「サイバーリスク総合支援サービス」では、サイバーリスク保険の契約者を対象とする情報・ツール提供サービスと、サイバーリスク保険の契約の有無を問わない簡易リスク診断サービス、専門事業者紹介サービスを提供してきた。最近では、「ワナクライ」と呼ばれるマルウエアが世界中に拡散して問題となったことなどでサイバーリスクに対する企業の意識が一段と高まり、サイバーリスク保険への加入は増加傾向で推移している。また、それに伴って、「サイバーリスク総合支援サービス」の利用企業も増えている。
 教学氏は「国内マーケットでは初めての特長あるサービスとして提供する『ベンチマークレポートサービス』を普及させて、さまざまな企業と接点を持ち、サイバーリスクについての知見を広めていきたい。これからも、顧客ニーズに対応する新しいサービスを提供していきたい」としている。
 企業商品業務部責任保険グループの川端宏明課長は「『ベンチマークレポートサービス』はサイエンス社のサービスを顧客向けに提供する点で画期的なものとなる。今後、サイエンス社との提携では当社のサイバーリスク保険の引き受け・リスク管理能力向上に力を入れていく」と話す。