2017.06.07 金融庁 「少短業者の経過措置」で有識者会議、少短協会総意で期間延長要望

 金融庁は9月1日、上智大学法科大学院の森下哲朗教授を座長とする第1回「少額短期保険業者の経過措置に関する有識者会議」を開催した。2006年4月の少額短期保険制度導入に際して、既存の事業者には引受可能保険金額を本則の5倍とするなどの経過措置が規定され、「平成24年保険業法改正」で5年間の延長が決定、18年3月末にその期限を迎える。今回の会議では、少額短期保険協会が保険契約者等保護の観点などから経過措置延長を要望した一方、保険会社からは経過措置の目的は十分達成できたのではないかと終了を求める意見が出された。

 17年3月末時点で、少短事業者は89事業者(同9月1日時点で95事業者)に上るが、経過措置が適用されているのは15事業者。会議では、金融庁の担当局が経過措置の経緯、少短事業者数の推移や経過措置適用事業者における被保険者の推移を説明した他、適用事業者4社がそれぞれの事業の概要や被保険者の実情、本則ではニーズに対応しきれない課題などを挙げて説明した。
 少額短期保険協会は、18年4月以降の5年間、新規契約で本則の2倍、既契約で現行の経過措置と同基準とする「少額短期保険事業者の経過措置延長の要望」を8月23日付で提出。同協会の杉本尚士会長からは、経過措置適用事業者15社の保有契約は協会全体の6割を占め、経過措置の動向が全体に与える影響は大きく、既契約顧客の不利益等を惹起しかねないとした上で、「協会の総意として経過措置延長を求める」との要望が出された。また同会長は、少短業界ひいては保険業界全般への批判や保険不信が発生する懸念があると訴えた。
 一方、損保協会は少額短期保険創設から活発な新規参入が見受けられ、特定ニーズに対応した商品提供などで顧客の支持を獲得していると評価しながらも、経過措置に関しては「12年間という経過措置の目的を達成する期間は十分に確保された」と延長には反対の意見を表明した。外国損害保険協会も同様に、契約者などの保護、制度移行の円滑化等についても相応の時間が十分に確保されたと判断できるのではないかとし「18年3月末をもって終了すると理解するのが妥当」との見解を示した。また、生保協会も制度創設時の趣旨、既に12年経過しているという事実を踏まえれば「収束すべき」と強調。一方で仮に経過措置再延長となった場合は、その前提として「特に慎重な検討が必要」と述べ、①激変緩和等の観点から経過措置を再延長する必要性(経過措置適用事業者に限り本則を超える額の新規募集を認めることは必要か)②次の経過措置期間満了まで、経過措置の収束に向けて関係者はどのような対応を講じていくべきか―という課題を挙げた。
 有識者からは、必要な範囲での延長もやむを得ないとの意見や、既に12年という期間は長いといったさまざまな意見が出された。同会議では引き続き、経過措置に関して意見を交換していく。
 少額短期保険制度は、06年4月に施行された改正保険業法によって、事業規模が小さく引き受ける保険が少額で短期のものについて新たな枠組みとして創設された。登録によって参入でき生損保商品の引き受けが可能だが、年間収受保険料50億円以下、保険期間の制限(生命保険1年・損害保険2年)などが規定されている。経過措置の対象となる保険金額に関しては本則では、死亡保険300万円、傷害死亡保険600万円、医療保険80万円、損害保険1000万円が上限となっているが、既存事業者を対象とした激変緩和策として13年3月31日まで、被保険者1人当たり本則の5倍(医療保険は3倍)とする経過措置が認められた。また、13年4月1日に施行された改正保険業法では、13年3月31日時点で締結されていた契約などの既契約に関し、被保険者1人当たり従来通り本則の5倍(医療保険は3倍)、新規契約は本則の3倍(医療保険は2倍)として18年3月31日まで5年間延長している。

 「少額短期保険業者の経過措置に関する有識者会議」メンバーは次の通り(敬称略・50音順)。
 ▽座長:森下哲朗(上智大学法科大学院教授) ▽メンバー:後藤元(東京大学大学院法学政治学研究科准教授)、坂勇一郎(弁護士・東京合同法律事務所)、水口啓子(株式会社日本格付研究所審議役兼チーフ・アナリスト)、唯根妙子(一般財団法人日本消費者協会専務理事)、吉村雅明(ミリマン 日本における代表)