2017.08.28 三井住友海上 シンガポール№1グループに、ファーストキャピタルを買収

 三井住友海上は8月24日、カナダ大手の保険・金融グループであるFairfax Financial Holdings Limited(Fairfax社)とのグローバルなパートナーシップを結ぶとともに、Fairfax社グループ傘下でシンガポール最大の損保会社First Capital Insurance Limited(FC社)の買収に関して基本合意したと発表した。今回の買収で三井住友海上は、シンガポールで第1位の保険会社グループとなる。

 三井住友海上は、FC社の株式の97.7%を取得する。取得価額は、FC社の普通株式が約16億米ドル(約1744億円)、アドバイザリー費用等(概算額)が約11億円で、合計(概算額)は約1755億円。買収資金は手元資金を充当し、エクイティファイナンスは行わない。買収は、関係当局の承認等を前提として、2017年度第4四半期中(18年1~3月)の完了を予定している。
 MS&ADホールディングスと三井住友海上は、中期経営計画「Next Challenge2017」の下、成長の持続、健全性の確保、収益性と資本効率の向上を基軸とした企業価値の向上に取り組んでいる。海外事業はそれらを支える成長エンジンの位置付けで、成長性・収益性の高い領域へ継続的に投資することで、ポートフォリオの多角化を進め、リスクの分散と安定的な利益の拡大を図ってきた。
 こうした戦略の下、04年の英国AVIVAのアジア損害保険オペレーション買収を契機として、アジアを中心に業容を拡大し、アセアン地域において収入保険料規模でトップの損保グループへと躍進。さらに、将来の成長が見込める新興国市場の深耕を通じて、収益基盤の強化を進めるとともに、欧州大陸での元受事業や16年2月の英国Amlin(現MSAmlin)買収などを通じ、欧米でのプレゼンスを高めている。
 同社では、アセアン地域での主導的地位の維持・向上や、三井住友海上の既存事業との高い補完効果とシナジー発揮の観点から、シンガポール損保市場のマーケットリーダーであるFC社の買収に関する今回の基本合意に至ったとしている。
 FC社は、シンガポールで収入保険料第1位の損保会社で、年間70億円規模の利益を挙げる同国のリーディングプレーヤー。同国をはじめ、アセアン地域のローカル企業分野の保険引受に強みがあり、過去5年間の平均コンバインド・レシオは76%、ROEは15%と、高い収益性を維持している。地域・種目ごとの引受リスクもバランスよく分散され、自然災害リスクの引受も抑制されていることから、安定的な収益構造となっているという。
 またFC社は、ビジネスパートナーとの信頼関係を大切にするという理念の下、顧客や再保険会社、ブローカー等と、強固かつ長期安定的な関係を築いている。
 三井住友海上では本件買収の戦略的意義として、①シンガポール市場における収益性と成長性の向上②アセアン市場における主導的地位の維持・向上③Fairfax社との提携を通じたグローバルでのさらなる成長の実現―の三つを挙げる。
 ①として、同社は、本件買収でシンガポール市場でのナンバーワン保険会社グループとなると説明。FC社は保険ハブである同市場に集まるアジアのローカル企業分野の引き受けに強みを有しており、日系企業やリテール・中小企業分野に強みを有する三井住友海上の既存事業との間で、ポートフォリオの高い補完効果を見込めるという。
 ②については、三井住友海上は世界で唯一アセアン10カ国全てに拠点を持ち、同地域の損害保険の総収入保険料規模でトップに位置している一方、FC社は単一の保険会社としては同地域でもトップクラスの保険料規模と収益を誇っていることから、三井住友海上は本件買収でアセアンでのトップのポジションをさらに確固たるものにするとしている。また、FC社は今後の成長戦略として、デジタル技術を活用したアジア地域でのリテール事業の強化を掲げており、そのノウハウと三井住友海上のネットワークを融合することで、アセアン各国でリテール向けの新規ビジネス拡大が期待できるという。
 また、③については、Fairfax社が世界30カ国以上に保険子会社を有する総収入保険料約1兆円のグローバル大手保険・金融グループで、特に、北米市場やロイズ市場で高いプレゼンスを誇っている上、デジタル技術の研究・開発を行う組織FairVenturesを運営するなど、保険分野におけるデジタル活用に取り組んでいることを強調。三井住友海上は、Fairfax社と、再保険やデジタル技術の活用等を含むグローバルな提携を視野に入れており、同社との関係を構築することで、海外事業のさらなる成長を実現できるとしている。