2017.08.21 第一生命HD 17年度第1四半期決算、営業業績 想定通りの水準

 第一生命ホールディングスが8月9日に発表した2017年度第1四半期決算によると、連結経常収益は前年同期比5%減の1兆5925億円となった。第一生命で16年8月に一時払終身保険の販売を停止したことによる一時払保険料の減少等が主な要因。第一生命の保障性商品や第一フロンティア生命の貯蓄性商品の販売増によって、全体として営業業績は想定通りの水準となった。連結経常利益は同17%減の981億円で、第一生命が前年同期に計上したヘッジに関わる資産運用益が剥落した影響等によって減少したものの、第一フロンティア生命の黒字回復によって一部相殺した。親会社株主に帰属する四半期純利益(連結純利益)は同48%増の719億円となった。当四半期においてジャナス・ヘンダーソン合併に係る株式交換益を計上したことや、第一生命で不動産に係る減損損失が前年同期との比較で少なかったことなどで、連結純利益の通期予想に対する進捗(しんちょく)率は40%となった。

 グループ各社の業績をみると、第一生命は経常収益が同11%減の9051億円となった。貯蓄性商品の販売を抑制したことで保険料等収入が同15%減の5432億円と前年同期実績を下回った。 純利益は同35%減の386億円で、前年同期は英国でのEU離脱を問う国民投票の結果を受けて急速に進んだ円高を背景に金融派生商品収益を大きく計上していたが、当四半期はその効果が剥落したこと等によって、減少した。また、当四半期は、株式市場が安定感を取り戻し、円安が進んだことから順ざやが改善しており、通期予想に対して想定を上回る進捗となった。
 第一フロンティア生命の経常収益は同23%減の3488億円だった。減少しているのは、内数であるその他経常収益の中で前年同期に責任準備金戻入額が計上されていたことによる。顧客ニーズの高い外貨建定額商品について、4月に商品改定を行ったこと等が奏功し、保険料等収入は同11%増の2591億円と前年同期実績を上回った。保険契約の増加に伴い、基礎的な収益力が増加したことに加え、当四半期は変額年金の最低保証や定額商品の市場価格調整に係る責任準備金負担が前年同期に比べ軽減されたことで、純利益は27億円と前年同期の当期損失から黒字へ回復した。
 海外生命保険事業では、引き続き好調な保険販売や運用収益の増加等によって前年同期比で増収となったが、昨年同期に計上された特殊な増益要因が剥落したことを主因に前年同期比で減益となった。
 第一生命の新契約年換算保険料は同28.8%減の247億円で、このうち第三分野は同49.5%増の168億円となった。4月の料率改定に合わせて顧客のニーズを踏まえた商品性の改定を実施した。また、保障性商品への販売シフトを進めるため営業職の評価基準を調整した効果が現れ、ブライトWay、クレストWayといった保障性主力商品の販売が伸びた他、前年度に続き法人向け介護保障商品の販売が第三分野の伸びをけん引している。
 第一フロンティア生命の新契約年換算保険料は同116.5%増の401億円と大幅な伸びを示した。これは16年7月から販売している据置き期間の短い年金商品によるもの。円建終身保険の一部の販売を再開した他、外貨建年金については今年4月に運用期間満了時に終身保険に移行できる特約を付した商品改定を行ったことなどが顧客ニーズを捉え、販売を伸ばしている。ビッグデータを使ったネオファースト生命の新商品も第三分野の伸びに貢献している。
 海外生命保険事業では、オーストラリアのTALが団体保険事業で複数の契約を獲得したため、新契約は高い伸びを示した。第一生命ベトナムも個人代理店の販売好調に加え、提携チャネルの貢献も高まり、同約6割増と好調が続いている。米国プロテクティブは変額年金の販売が伸び悩んでいるものの、ユニバーサル保険等、生命保険商品の販売が堅調に推移している。こうしたことから、グループ全体の新契約年換算保険料は前期比43.1%増の954億円となった。
 保有契約年換算保険料は第一生命が前年度末比0.1%減の2兆1443億円で、このうち第三分野は同1.5%増の6154億円だった。第一フロンティア生命は同4.4%増の7440億円、海外生命保険事業は合計で同横ばいの7681億円となった。新契約の伸びを受け、グループ全体の保有契約年換算保険料は、同0.8%増の3兆6625億円となった。新契約の伸びに比べ保有契約の伸びが低いのは12月末から3月末にかけての円高進行によってプロテクティブの円貨換算額が減少したことや、第一生命の新契約額が既契約の減少額を下回ったことによる。
 第一生命の最低保証に係る責任準備金の繰入れ・戻入れを調整した後の基礎利益は前年同期比19.4%増の1025億円となった。前期に比べて順ざやが改善し、保険関係損益の減少を埋め合わせて基礎利益の増加につながった。順ざやの改善は、主要通貨に対して円安が進んだことや、投資信託の分配金などの収入が一部前倒しで計上されたことが主な要因。保険関係損益の減少は、販売チャネル体制の強化に向け営業職数を増加させていることや、新料率に基づく新契約に係る標準責任準備金の繰入が増加していることによる。
 第一生命の解約失効高は同1.3%改善した。営業職数は4万5100人で、個人年金等の販売を抑制したため、一人当たりの新契約件数は前年同期の6.6件から5.2件に減少しているが、一人当たりの営業収益価値は前年同期比で増加している。ソルベンシー・マージン比率は、856.0%で、前年度末の850.5%とほぼ同様の高い水準を維持しており、十分な財務基盤と健全性を確保している。第一生命ホールディングスの連結ソルベンシー・マージン比率は772.7%だった。