2017.04.28 東京海上日動 荷送人賠償責任保険、契約件数が順調に推移

 東京海上日動が2016年4月から販売している「Cargo Owner,s Errors & Omissions Liability Insurance」(荷送人賠償責任保険)の契約件数が順調に推移している。同商品の開発の背景には▽近年、コンテナ重量の過少申告が要因と考えられる事故や、危険物等の積載物の不適切な申告・申告漏れを起因とする事故が多発している▽コンテナ船の大型化に伴い事故発生時の損害額と事故の影響が大きくなっている―ことから、輸送に関する国際条約や関係法規が改正され、荷送人の責任が国際的に強化される潮流になっていることがある。こうした荷送人を取り巻く環境変化に伴ってリスクに対する意識が強まり、同商品への関心が高まった。海上業務部貨物業務グループの新谷哲之介担当課長は「今後も保険会社の立場から、荷主も第三者に賠償責任を負う可能性があることと、賠償責任リスクの重大さを伝えていきたい」と話す。
 コンテナ重量の過少申告については、IMO(国際海事機関)でSOLAS条約(海上における人命の安全のための国際条約)の一部が改正され、2016年7月1日から、荷送人は輸出貨物のコンテナ総重量を計測して船会社等に申告することが義務付けられている。
 これによって、荷送人には①コンテナ総重量の通知漏れ、規定の計測条件の未充足、情報誤り等によって船積みされなかった場合に臨時保管費用や返送費用等の費用を負うリスク②船舶に積載されない場合に、代替品の急送費用等、遅延をリカバーするために発生する費用を負うリスク③コンテナ重量の誤り等に起因して荷崩れ等の事故が発生した場合に、船会社・荷役業者・他の荷主等の他人の身体の障害や財物の損害に対する損害賠償責任を負うリスク―が生じる可能性がある。
 危険物に関する荷送人の責任をめぐっては、日本の商法にはこれまで危険物の申告の規定がなく、法律上、整備されていなかったため、18年の商法改正によって荷送人の危険物についての運送人への通知義務が明確化されることとなった。また、立証責任が荷送人に転換することになっており、荷送人が危険物の通知を怠ったことに過失がなかったことを立証できない場合には賠償責任を負うことになる(過失推定責任)。
 加えて、04年に発生した公海航行中のコンテナ船の火災事故について、運送人に危険物の申告を怠った荷送人の船舶と他の荷主の貨物損害に対しての損害賠償責任が15年12月に確定し、危険物を輸出する荷送人の責任が明らかになり、危険物に関する専門知識を持たない商社、フォワーダーであっても、船荷証券(B/L)上、荷送人である以上は危険物を適切に申告することを求められるようになった。
 こうしたことから、荷送人の業務遂行上の責任は増大し、貨物の分類上の誤りや危険品の申告漏れなどの「申告上の過失」で危険物が正しく積み付けされずに化学反応等を起こして船会社や他の荷主に損害を与えるリスクや、貨物の特性に応じた梱包(こんぽう)がされなかったり、所要のコンテナ種類や輸送手段の選択がされなかった場合など「不適切な輸送」で貨物が輸送中に変質等を起こし他者に損害を与えるリスクなどが想定されている。
 こうした状況下、荷送人は新たなリスクへの対処策を講じる必要に迫られているが、対人・対物事故といった実損害を伴う事故を補償する保険はあるものの、荷送人の過失を想定した商品はなかった。そこで、東京海上日動が荷送人の増大するリスクに対応するために開発したのが、荷送人賠償責任保険だ。
 同商品は、輸送中(積み込み・荷卸し作業中を含む)の当該貨物が原因となって発生する対人・対物損害で荷送人が被る賠償責任を補償することに加え、これまで補償できなかった荷送人の過失等による通知や申告漏れ、手配方法の誤り、書類の誤記などに起因する事故も明確に補償の対象としていることが特徴となっている。
 さらに、誤申告や申告漏れで貨物の引き取りが拒否されてしまった際に発生する各種費用についてカバーする特約「Extra Expense for Errors and Omissions」では、被保険者もしくはその使用人による貨物の申告、重量の確認・確定などの誤りや漏れなどの過失に伴い、船会社や港湾施設が貨物の受け取りを拒否した場合、貨物の返送に掛かる運賃や各種費用、貨物の輸送が遅れたことによって代替品を急送するために掛かる運賃や各種費用、貨物の荷積みや荷卸しに掛かる費用、再梱包費用、保管費用などを補償する。
 新谷氏は「貨物所有者としての第三者に対する従来の賠償責任保険では船会社などの運送人は契約関係があるため、第三者ではなく、対象外だった。荷送人賠償責任保険では運送人の財物に損害を与えた場合、もしくは身体に障害を与えた場合に荷主が負う運送契約上および法律上の責任をカバーする」と話す。
 16年度は拡販に当たって、メーカー、商社、フォワーダーをターゲットとし、個別営業に加え、商法改正などをテーマとしたセミナーを東京、大阪、名古屋で開催して、参加者に同商品の内容を紹介してきた。17年度の取り組みについて、新谷氏は「これまでとは異なる切り口で社会的な動きと連動するような形によって同商品に焦点を当てた活動を展開する」との考えを示している。