2017.04.06 金融庁、顧客本位の業務運営に関する原則定着へ

 金融庁は3月30日、最終的に確定した「顧客本位の業務運営に関する原則」と、金融庁としての同原則の定着に向けた取り組みについて公表した。金融庁としての同原則の定着に向けた取り組みでは今後、同原則の定着に向けて各金融事業者が実効的な方針を策定し、実践していくよう、取り組みを進めていく必要があり、その際、金融事業者による取り組みが形式的なものにとどまることなく、金融事業者がより良い金融商品・サービスの提供を競い合うといった実質を伴う形での定着が重要なことから、①金融事業者の取り組みの「見える化」②当局によるモニタリング③顧客の主体的な行動の促進④顧客の主体的な行動を補う仕組み―の4項目を推進する。【「顧客本位の業務運営に関する原則」は3面に掲載】
 金融庁では、同原則を踏まえた金融事業者の行動について、▽顧客本位の業務運営を確保するための経営トップのリーダーシップの発揮▽マネジメント層における業務計画等の策定・実施、フォローアップ▽現場レベルでの実践を通じた浸透、フィードバック―など、それぞれの段階に応じた適切な行動が求められるとともに、自らの取り組みが実質を伴う形で定着しているか、仮に実質を伴っていないとすれば、どの段階でうまく機能していないのかを分析し、経営トップの責任において改善がなされるべきとしている。
 顧客による主体的な行動、当局の役割等に関しては、より良い取り組みを行う金融事業者が顧客から選択され、これを踏まえて金融事業者が自らの業務運営を不断に見直していくという好循環が生まれるためには、顧客が主体的に行動することが重要であり、金融事業者の取り組みの「見える化」や顧客のリテラシーの向上が求められるとした他、顧客の主体的な行動を補完するものとして、当局による適切なモニタリングや第三者的な主体による評価、顧客にアドバイス等を行う担い手の多様化等も有効と提示している。
 一方、金融事業者の業務運営に関する現状認識として、フィデューシャリー宣言を行った先であっても顧客本位の業務運営の実現に向けて現状必ずしも大きな進展は見受けられない状況にあるとし、▽投資対象を特定の種類の資産に限定したテーマ型の商品が依然、販売額上位の銘柄の多くを占めている▽投資信託の販売額と解約・償還額は、ほぼ同額である状況が継続しており、残高の増加には貢献していない▽売れ筋投信の9割が毎月分配型であり、特に地銀では積立投信であっても販売額の半分以上を毎月分配型が占めている―ことを挙げている。
 こうした中、金融庁は同原則の定着に向けた取り組みとして①金融事業者の取り組みの「見える化」では、各金融事業者が顧客本位の業務運営の定着度合いを客観的に評価できるようにするための成果指標(KPI)を取り組み方針やその実施状況の中に盛り込んで公表するよう働き掛ける。また、今年6月末から当面四半期ごとに、取り組み方針を策定した金融事業者の名称とそれぞれの取り組み方針のURLを集約し、金融庁ホームページで公表する。
 ②当局によるモニタリングでは、金融事業者における業務運営の実態を把握し、ベスト・プラクティスを収集する他、収集されたベスト・プラクティスや各事業者が内部管理上で用いている評価指標などを基に金融事業者との対話を実施し、「原則」を踏まえた取り組みを働き掛ける。さらに、各金融事業者の取り組み方針と、取り組みの実態が乖離(かいり)していることはないかといったことについて、当局がモニタリングを実施。モニタリングを通じて把握した事例等については、さまざまな形での公表を検討する。
 ③顧客の主体的な行動の促進では、実践的な投資教育・情報提供の促進を行い、関係者で作成した投資初心者向けの教材の活用や、商品比較情報等の提供の在り方に関するワーキンググループ設置による議論の整理を進める。長期・積立・分散投資を促すためのインセンティブとして、積立NISA対象商品の商品性の基準の公表と、これを踏まえた長期・積立・分散投資に適した投資信託の提供を促進する。
 ④顧客の主体的な行動を補う仕組みでは、第三者的な主体により金融事業者の業務運営を評価。客観性、中立性、透明性が確保される形での民間の自主的な取り組みを引き続き促進する。加えて、販売会社等とは独立した立場でアドバイスする者などに対する顧客のニーズに適切に対応できるよう必要な環境を整備し、顧客にアドバイス等を行う担い手の多様化を図る。