2016.12.20 損保協会 北沢会長が来年を展望、レジリエントな社会づくり

 損保協会の北沢利文会長(東京海上日動社長)は12月15日、日本銀行で行われた定例会見の中で、今年の振り返りと来年の展望を述べ、「レジリエントな社会づくりに取り組んでいきたい」との抱負を述べた。損保業界で果たすべき役割として、地震リスクに対する国民の理解促進、保険会社の健全性確保、迅速な保険金支払いの3点を挙げ、注力していく考えを示した。
 北沢会長はまず、今年を振り返り、「先が見通しにくい時代であることをあらためて印象付けられた」と感想を述べた。従来、必ずしもリスクが高いと思われていなかった熊本や鳥取での大地震の発生や、台風の太平洋側から東北地方への上陸や北海道への三つの上陸といった観測史上初の事態を挙げ、自然災害の脅威がこれまでの延長線上にないかたちで全国に広がった1年だったとした。
 こうした自然災害リスクに対して、損保業界の果たすべき役割として①国民に自然災害リスクについて正しく認識してもらうとともに、損害保険の活用を含めた備えを促していく②複雑・多様化するリスクを保険会社がしっかりコントロールし、健全性を確保しながら社会のニーズに応える保険商品を提供していく③広域に発生する自然災害においても迅速に保険金を支払うことができる態勢を構築する―を挙げ、「三つの役割を果たすこと、いわば自然災害への挑戦を通じて、レジリエントな社会づくりに引き続き取り組んでいきたい」との考えを示した。
 一方、国内外の情勢については、英国のEU離脱を決定した国民投票や米国大統領選挙などで事前の予想と異なる結果となり、来年も英国のEU離脱交渉の開始、トランプ氏の米大統領就任、また、仏・独の選挙などが予定されており、政治や経済にかかる不透明感の長期化が想定されると指摘。他方、国内経済は、安定した政権の下、雇用・所得環境の改善や企業収益の向上が進んでおり、今後の個人消費の持ち直しや公共投資による経済成長の押し上げ効果も期待できるとしつつ、経済の好循環によって持続的な成長が定着していくためには、民間が自ら創意工夫し、生産性を高めて稼ぐ力を伸ばしていくことが重要との認識を示した。
 こうした状況下、損保業界としても、多発する自然災害や、サイバーリスクなどイノベーションに伴って生じる新たなリスクにも積極的に対応し、国民生活を下支えするよう努力していくとした。最後に「こうしたボラタイズな(変わりやすい)時代だからこそ、万が一の備えである損害保険が役に立つと考えている。当協会は来年5月に創立100周年を迎えるが、これからの100年も損害保険が役に立ち、必要とされる産業であり続けられるよう、しっかりとたすきをつないでいきたい」と結んだ。
 この他、同協会の活動報告として、①2017年1月の地震保険改定と同協会の取り組み:地震保険制度創設50周年記念フォーラム(9月5日開催)を契機とした業界を挙げての地震保険の加入促進・理解促進の強化、巨大地震の発生に備えた迅速な保険金支払いに向けた態勢の整備②損害保険・防災リテラシー向上への取り組み:消費者の損害保険への理解促進や地域防災力の向上のための「損害保険・防災リテラシーマップ」の作成、若年層から高齢者に至る年齢層別の啓発メニューの用意③アジア保険市場の健全な発展に向けた取り組み:日本国際保険学校(ISJ)をはじめ、国際会議での情報発信や個別地域支援を通じたアジア保険市場の健全な発展に向けた保険技術協力の推進、17年5月に迎える同協会100周年を契機としたアジア各国・地域の保険監督官庁や損保協会などトップ層の東京への招待と、「アジア損害保険エグゼクティブフォーラム」の開催―などを紹介した。