[2011-12-27]
日本再共済連、第6回共済課題研究会開催
日本再共済生活協同組合連合会(日本再共済連)は12月1日、東京都千代田区の秋葉原UDXカンファレンスで「第6回共済課題研究会」を開催した。モラルリスク案件を専門に取り扱う調査会社㈱inspectの松本雅裕社長が「モラルリスクとクレーマーの現状について」と題し、モラルリスクやクレーマーの実態、不正請求事例とその対応策などについて解説。当日は、会員団体などから29団体、61人が参加した。
冒頭、角田修作理事長があいさつし、「東日本大震災では、9月末時点で380億円の再共済金を支払い、各共済団体の安心・安全・健全な経営の役に立つことができたほか、日本再共済連の必要性、使命、役割を発揮することができた」とするとともに、「日本再共済連では共済団体へさまざまな情報を提供し、共済団体の抱える課題解決や組織の発展に貢献することが大切な役目だと感じている。当研究会が有意義な時間になれば幸いだ」と述べた。
松本氏はモラルリスクの実態について、東日本大震災で見られた火事場泥棒の状況、交通偽装事故、各国における保険金詐欺被害の実態と取り組みなどを解説。また、傷害事故多発者の不正請求事例を紹介し、「事故多発者、過剰・過大請求、一部整骨院の存在に注意し、打撲やねんざなどの診断結果や治療に関する医療知識だけでなく、事故状況や受傷転機など受傷発生原因にも目を向ける必要がある」と指摘した。
クレーマーについては、計画的タイプと感情的タイプがいるとし、計画的タイプはクレームそのものが目的のため、発言には注意が必要とした一方、感情的タイプは冷静に話をよく聞き、論点がどこにあるのかを具体的に聞いて拒否すべきものは断固拒否することで収まるケースが多いとした。
また、重複契約者の不正請求事例を紹介した上で、クレーマーの共通点として、①通常では苦情といえないものを大げさに取り上げる②過去の苦情被害を持ち出して自分を優位に置く③恐喝には至らないが、対応が困るように脅しを仕向けてくる④現場で話をすれば解決できることでも本部や関連各署に申し入れる⑤家族や外部の人もクレーマーと認めている―などを挙げ、「クレーマーはしつこく、非常に敏感なため、専門担当者の教育訓練や、クレーマーを分析したデータベースの構築などを検討した方がよい」と強調した。 |
[2011-12-27]
マーシュ、5億ドルの取引信用保険を手配
マーシュが世界銀行グループの国際金融公社(IFC)向けに手配した新たな取引信用保険により、新興国市場で貿易量の増加が見込まれている。IFCは、50年以上前に設立された新興国市場における民間セクター開発のための世界最大の国際金融機関。
大手保険会社9社の引き受けによるこの新たな5億3200万ドルの取引信用保険により、IFCの世界貿易金融プログラム(GTFP)のキャパシティー拡大が実現する。GTFPは新興国市場の貿易取引を保証するもの。
同保険プログラムにより、IFCの各国現地銀行顧客に対する貸し倒れリスクが保全され、当面、30カ国50行がカバーの対象となる。これは保険でIFCの与信枠の拡大を図る初めての試み。
2005年の発足以来、GTFPは1万件以上の保証契約を発行しており、総額は143億ドルに上る。輸入が危機的で輸出によって不足する外貨を稼ぎ出すとき、この保証制度は世界最貧の国々における継続的な信用取引を実現する。
IFCの短期金融担当ディレクターであるジョージアナ・ベーカー氏は「IFCは、GTFPを通じて世界貿易の推進役と最貧国における経済成長と雇用育成を促進する持続的なパートナーシップを創造する上での指導力を発揮している。マーシュの手配によるこの新しい機能は、わたしどもの提携銀行が新興国市場の中小企業との取引増加を支援し、実現しなかったはずの貿易を可能にする」と述べた。
また、マーシュのポリティカルリスク・取引信用保険プラクティスのグローバルリーダーであるエヴァン・フリーリー氏は、この新しい保険について「保険が新興国の成長を促し、貧困を削減し、そして人々の生活向上支援という重要な役割を果たす大変良い事例。本プログラムの成功は、わたしどもの“顧客のビジネスに不可欠なニーズを解決する革新的なソリューションを提供する”という継続的なコミットメントを明示している。わたしどもにとって、IFCと協業し新興国の多くの人々の生活を変えていくことに貢献するのは大変光栄なこと」とコメントした。 |
[2011-12-27]
NKSJグループ、海外リスク情報サービスの提供開始
近年、アジア地域を中心に海外事業展開を進める中小企業が増加する一方、世界情勢の目まぐるしい変化によって、自然災害や政変、テロなど、海外拠点の業務を妨げるリスクも増えている。そうした中、NKSJグループの損保ジャパンと日本興亜損保は、グループ会社であるNKSJリスクマネジメントと連携し、顧客企業向けに海外リスク情報を無料で提供する「NKSJグローバル・インテリジェンス」サービスを10月から開始した。海外駐在員や出張者、その家族などの安全を支援するために、NKSJリスクマネジメントから海外リスク情報のトピックスを顧客企業に毎日配信する。開発したNKSJリスクマネジメントリスクコンサルティング事業本部の竹腰宏上席コンサルタントと損保ジャパン営業企画部の石田健介担当課長に具体的なサービス内容や活用方法を聞いた。
同サービスは主に、国別リスク情報、アラート情報、安全対策情報を顧客企業に提供する。
国別情報では、32カ国の犯罪発生頻度、テロの危険性、治安機関の信頼度、誘拐の危険性、デモ・暴動などの発生頻度、政治・経済の安定性について、5段階でリスクを表示し、顧客企業の訪問国のリスク認識に役立ててもらう。アラート情報は、日系企業が影響を受ける可能性のあるリスク情報を顧客企業に毎日メール送信し、現地の環境把握をサポート。また、安全対策情報では、安全なホテルの選択方法やタクシー利用時の犯罪被害防止策、デモ発生時の注意事項などを提供し、海外滞在時のリスク対策を支援する。
サービス対象企業は原則、損保ジャパン、日本興亜損保などNKSJグループの取引企業で、会員制ウェブサイトの画面上に必要事項を入力して登録する。海外リスク情報のメール送信先は、1企業5アドレスまで登録可能になっている。
同サービスのポイントは、リスク情報を専門とする米国のiJET社とライセンス契約を結び、同社が提供する大量の情報の中から顧客企業向けの情報をピックアップし、翻訳・編集した上で提供することだ。現在、インターネットなどを活用してある程度の海外情報は誰でも入手できるが、その情報はほとんどが英語の文章であり、企業が自社にとって有益な情報をタイムリーに探し当てることは容易ではない。「グローバル化が進んでも、お客さまは日本語のコンテンツに利便性を感じている」(石田担当課長)という顧客企業のニーズを受けて同サービスを開発した。
今後は、NKSJグループ各社との取引をさらに拡大したい企業への提供や、国内事業では保険に加入していても、海外では取引をしていない法人契約者に対して積極的に働き掛ける考えだ。特に、法人向けの海外旅行保険や貨物保険、海外拠点の管材物件に付ける火災保険やリスクマネジメントなどの分野でビジネス拡大を図る。
竹腰上席コンサルタントは「既に会員となっている顧客からも『無料でこれだけの情報が提供してもらえるのは大変助かる』といった好評を得ている。これからもできるだけ多くのお客さまに活用いただき、海外事業展開の助けになってくれればと考えている」としてサービスの利用拡大に期待している。 |
[2011-12-26]
エーオンジャパン、スイス・リー・インターナショナル・エスイー、共同企業保険セミナー開く
エーオンジャパンとスイス・リー・インターナショナル・エスイー日本支店は12月8日、堂島ホテル(大阪市北区)で共同企業保険セミナーを開催した。地震と賠償の二つのテーマで講師4人が2時間半にわたって講演した。会場には、地元大手企業から10人のリスクマネジメント担当責任者が参集した。大阪での企業保険セミナーは今回が初めてだが、今後も大阪でこのようなセミナーを行っていく方針。
主催者側を代表して、スイス・リー・インターナショナル・エスイーの日本における代表者であるユルグ・シュトール氏は、「オーストラリアやニュージーランド、中国、タイなどでも大きな地震や洪水による多くの被害があり、リスクマネジメントは企業に取って欠かすことのできない重要なこと。エーオンジャパンと共に、リスクマネジメントの提案をしていく」と述べ、地震に関するBCPもさることながら「事業を継続するための費用がいかに大事か。本日の講演では、開発した企業地震保険の賠償についての説明をさせていただく」と、あいさつした。
同日本支店シニア・クライアント・マネージャーの藤田浩一氏は、「東日本大震災のハイライトとその後の保険市場動向」、同シニア・プロパティ・アンダーライターの岩崎智哉氏(地震工学博士)は、同社が国内で提供する「企業地震保険の案内」、同シニア・カジュアルティアンダーライターの原智朗氏は「巨大事故の時代と賠償責任保険」について講演、エーオンジャパンの神田誠一氏は、地震リスクマネジメントとして「東日本大震災後に求められるマネジメント戦略」をテーマに解説した。
藤田氏は、東日本大震災が金融・経済に及ぼした影響から、世界の保険市場への影響、さらに今後の企業向け地震に関する保険の傾向について述べた。地震・津波による経済損失の予想額は、2010年の日本のGDPに対して2.6%~5.7%に当たる15~23兆円。保険損害の予想額は、物的損害、生命保険・健康保険分野を含め1兆1000億~3兆4000億円と全体像を説明。これらを受けて再保険分野の世界保険市場に対する影響を解説した。また、最近の地震活動による経済的影響について、チリ、ニュージーランド、日本の大地震では、各国とも耐震基準は整備されていたにもかかわらず経済損失・保険損害とも想定を上回る結果となったと分析。その上で、ユーザーが関心を寄せる「これからの保険料はどのようになるのか」、過去20年間の巨大自然災害による損害とリスクコストを説明した。さらに、企業保険に関する市場動向では、新規に地震保険を検討する動きが活発化しているが、家計分野での60%に比し企業の5%は非常に低いと指摘し、市場環境や顧客の需要傾向を解説し保険設定に対する方向性を示した。最後にスイス・リー・グループの概要を説明した。
神田氏はステークホルダーへの説明性を考慮したリスクマネジメント体制の構築に当たっての留意点として、①地震リスクマネジメントを発展させるために留意すべきこと②リスク評価の概要と結果の捕え方③確率情報を用いた意思決定方法④リスク転嫁例―を説明。リスク管理担当者は、見えないものは可視化(定量化)することが必要で、地震リスクマネジメントには「どこまでを考慮して、それを超えたらどうするか」などの方針・方策を論議することが大切だと述べた。
岩崎氏は企業地震保険の補償について「損害保険金」「利益保険金」「事業継続費用保険金」の三つの補償のうち、今回、開発した利益の対象外で地震後の復旧に必要となる費用の内容を説明し、契約から支払いまでの流れなどを案内した。
原氏は、スイス・リー・グループにおける賠償責任保険の再保険としての引き受け方、同保険のマーケット、大企業の賠償責任保険での一般的な特徴を示した。その上で、05年以降、巨大賠償事故が頻発していることを挙げた。
セミナーのクロージングスピーチとしてエーオンジャパンの山本達也社長は、「自宅は阪神大震災で崩壊し、米国では同時多発テロに遭い、帰国すると今回の地震が起こった。事故は案外身近なところで起こるもの」と述べた。その上で「損害保険は、今までならどこで買っても同じ値段で同じカバーだったため研究する意味がなかったが、今回スイス・リーが新しいアイデアで保険カバーを提供した。リスクマネジメントの立場で評価していただき、それに足りる情報を提供するのがエーオンでありスイス・リーだ」と述べ、今後もこのようなセミナーを開催する意向を示した。 |
[2011-12-26]
金融庁保険セクター分析担当植村氏、「保険フォーラム2011」で講演
金融庁監督局で保険セクター分析担当課長補佐を務める植村信保氏は12月1日、東京都千代田区のベルサール九段で開催された「保険フォーラム2011」(㈱セミナーインフォ主催)で「保険会社のリスク管理の高度化に向けて」をテーマに講演した。
経済価値ベースのソルベンシー・マージン比率やERM(統合的リスク管理)の導入など保険会社に対して厳格なリスク管理態勢の整備が求められる中、金融庁がどのようなスタンスで保険会社にリスク管理の高度化を促していくのかを検査・監督方針を踏まえて解説。当日は大勢の保険業界関係者が参加し、同講演をはじめとする各セッションを聴講した。
同氏はまず、保険会社の健全性に対する規制の動向について解説。現在の健全性確保の枠組みとして「自己規律(リスク管理態勢、ガバナンス面)」「行政による規制、監督」「市場規律」の3点を挙げるとともに、来年3月末から本格的に導入される新基準のソルベンシー・マージン比率について触れ、「既に保険各社は、今年の3月期と9月期決算で新基準のソルベンシー・マージン比率を公表しており、また、長い時間をかけて準備してきたこともあって、導入はスムーズに進んでいるのではないか」と述べた。
2011事務年度監督方針の重要項目の一つに挙げた「リスク管理の高度化の推進」については、ERMの全体像を説明しながら、それぞれの構成要素と検査マニュアルや監督スタンスとのかかわりを紹介。「ERMでは、リスク管理部門だけがリスク管理を行うのではなく、経営陣が恒常的にリスクと向かい合って実施すべきものであり、経営そのものだと考えている」と述べ、管理プロセスにおいても全社的な取り組みになっているかどうかが重要だと指摘した。
また、監督当局がERMに注目する理由として、ERMの目的は会社が自らの健全性を確保しつつ企業価値を持続的、安定的に向上させることにあるとした上で、「企業価値の安定的な向上が消費者保護に資するという考え方があるために、当局はERMに注目している」と強調した。 |
[2011-12-26]
東京海上HD、米保険グループとデルファイ社買収開始で合意
東京海上ホールディングスは12月21日、米国の生損保兼営保険グループのデルファイ・ファイナンシャル・グループと傘下の生損保会社など(以下、デルファイ社)の買収について記者会見を行い、子会社の東京海上日動を通じてデルファイ社を買収する手続きを開始することに合意したと発表した。東京海上日動がデルファイ社の株式を100%取得して完全子会社とする。これにより、海外保険事業の規模・収益共に一層の拡大が実現し、東京海上グループの修正利益に占める海外保険事業の割合は37%から46%に上昇する(タイ洪水ロスによる修正利益への影響額を除く)。買収総額は26億6400万米ドル(約2050億円)で、買収資金は東京海上グループ内の手元資金と外部借り入れにより調達し、2012年第1四半期(4―6月期)中に完了する予定。
記者会見で隅修三社長は買収の戦略的目的について、①米国の優良保険会社買収を通じた海外保険事業の規模・収益のさらなる拡大②より分散が効いた事業ポートフォリオの構築③既存事業との理想的な補完関係を生かした新事業展開―を挙げた。
具体的には、米国が引き続き中長期的に成長が期待できる世界最大の保険市場であること、また、デルファイ社が米国生損保両事業分野で優良保険会社を有する保険グループで、米国生保事業への参入による収益基盤の多様化とリスク分散を実現できること、巨大自然災害リスクへのエクスポージャーが限定的で、料率水準が周期的に変動する米国保険市場特有の料率動向に左右されにくい特徴があることから海外保険事業収益の安定化が可能となること、フィラデルフィア社を中心とする同社既存米国事業とデルファイ社間にはオーバーラップがなく、顧客層が類似していることからクロスセルが見込めることなどを強調した。
また、当面は同社グループの米国統括持ち株会社「Tokio Marine North America社」とデルファイ社をそれぞれ存続させながら、一体的運営とシナジー追求を図っていくとともに、同社の高い格付けと強固な財務基盤を活用し、デルファイ社の労災保険事業(特に労災特約受再保険事業)や定額年金事業などを拡大していく方針を示した。
東京海上グループは、日本発のグローバル保険グループを目指し、海外保険事業の規模・収益の拡大を中長期の成長戦略のけん引役と位置付け、自力成長とM&Aによる成長戦略を推進しており、収益の飛躍的成長を実現する一方、海外保険事業のさらなる成長の実現や資本効率向上の観点から、引き続き優良な買収案件について検討している。
デルファイ社(デラウェア州ウィルミントン市)は1987年の創業以来、一貫して高成長・高収益を実現しており、現在は米国生保・損保事業の両分野における優良保険グループに成長。傘下の生保会社リライアンス・スタンダード社は1907年、損保会社セーフティ・ナショナル社は1942年創業という長い歴史と事業経験を有している。
従業員福利厚生関連のニッチ保険市場〔生保事業:就業不能保障保険、団体生命保険、定額年金保険など、損保事業:超過額(エクセス)労災保険、労災特約再保険など〕に特化した強固なビジネスモデルや、経験豊富で優秀な経営陣、保険引き受け規律と収益重視の徹底、ベンチマークを上回る優れた資産運用実績などの強みを生かすことにより、一貫して他社を凌駕する高成長・高収益を実現している。
過去10年間の保険料と手数料収入の年平均増収率は12.2%と高い伸びを示しており、2011年9月末累計の増収率も9.7%と順調に推移している。また、過去10年間の平均合算比率は94.6%と米国損害保険業界平均値の101.3%を下回り、安定的に推移している。 |
[2011-12-22]
損保協会、来年4月、一般社団法人へ移行
損保協会は12月16日の業界紙向けの定例会見で、公益法人制度改革での一般社団法人化について、当初のめどを1年前倒しして来年4月に移行することを、前日の理事会で決定したと発表した。今後は移行に向けて定款や諸規定などの対応を進めていく。
来年度の税制改正要望に関しては、重点要望項目としてきた受取配当などの二重課税の排除は現行のままとなったものの、損害保険に係る法人事業税の現行課税方式の継続については現行維持となったことを報告した。
また、会見では、前日行った日銀記者クラブでの協会長定例会見で報告した東日本大震災での業界の取り組みと今後の課題についても報告。地震保険の支払い状況や具体的な取り組み状況のほか、損保会社に寄せられた意見を紹介した。それによると、コールセンターの電話対応や損害調査時に訪問した調査員についての満足度調査の結果、「満足」または「どちらかといえば満足」との回答が約8割を占めたものの、「損害調査方法や保険金の支払い基準についての説明」や「損害の程度・保険金の額の説明」に関しては相対的にやや満足度が低いことから、「制度に関する詳細な知識や顧客への説明スキルなどを向上させていく必要がある」と分析している。
地震保険対策本部も12月15日付で解散し、今後は理事会を中心とした体制で引き続き保険金の支払いに注力するとともに、各種課題の検討を行う方針を明らかにした。 |
[2011-12-21]
金融庁、生保10社への業務改善命令解除
金融庁は12月16日、2008年7月に多数の保険金などの支払い漏れが認められた生保会社10社に対して発出した業務改善命令に基づく改善状況の定期報告義務を解除すると発表した。業務改善命令を受けた各社が保険金等の支払い漏れなどを防止するための経営管理態勢と業務運営態勢を整備し、保険金などの支払い漏れが大幅に減少していることなどから判断した。金融庁は今後も支払い管理態勢のさらなる充実を図っていく観点から、生保協会と生保各社に対して、支払い漏れなどの発生状況を定期的に公表することや、支払いに関して保険契約者などが幅広く相談できるよう、募集文書の内容の充実などの措置を講じることを要請したとしている。
生保会社の保険金などの支払い漏れ(支払い漏れ・請求案内漏れ)の問題は06年以降に判明。金融庁は07年2月、生保38社に対して01年度から05年度までに発生した支払い漏れなどについて報告徴求命令を発出。08年7月に38社中37社で多数の支払い漏れなどが判明したことから、問題の大きかった10社に対して業務改善命令を発出した。
業務改善命令を受けた各社は、支払い漏れ防止に向け、経営管理態勢と業務運営態勢についての措置を講じてきた。経営陣の指揮の下、診断書の電子化や複数人による並列的な診断書の確認などを実施するとともに、支払いに関する内部監査体制の強化、支払担当者の研修・教育の充実、保険契約者などに対する注意喚起や支払い内容の情報提供、保険商品の改廃などによって支払い漏れ防止を図っている。
請求案内については、従来の保険契約者からの申し出を待つ受動的な態勢から、支払いに結び付く可能性があるものについて、支払時や支払い後、直ちに請求案内を実施する能動的な態勢に変化している。また、生保協会では請求案内の内容・方法・タイミングや、保険契約者などによる保険事故発生の認知を確保するための説明方法などについて基本的な考え方を示した「保険金等の請求案内事務に関するガイドライン」を作成するなど業界全体としての取り組みも進んでいる。
こうした態勢整備によって、05年度に約17万8000件・約198億円あった保険金などの支払い漏れと請求案内漏れは、10年度には約2000件・約4億円に大幅に減少した。その大半は、保険会社が支払い後の検証や内部監査などで自ら発見。さらに、各社は支払い漏れなどが発生する都度、発生原因を解明し、必要な対策を講じる態勢を整備してきた。
こうした状況を踏まえ金融庁は生保10社に対する業務改善命令の解除を決めたもの。金融庁では「現在の態勢を維持・向上させ、支払い漏れなどをゼロに近づけるよう努める必要がある。支払い漏れなどの発生状況の定期的な公表や、支払い事由に該当するか分からないときも保険会社への問い合わせを促すよう注意喚起情報の記載を改めるなど募集文書の内容の充実などを要請する」としている。
(生保10社=日本生命、第一生命、明治安田生命、住友生命、朝日生命、富国生命、三井生命、大同生命、アフラック、アリコ) |
[2011-12-16]
パリ・ユーロプラス、ファイナンシャル・フォーラム開催
欧州の財政問題を機にPIIGS(ポルトガル・イタリア・アイルランド・ギリシャ・スペイン)の債権について保険業界では圧縮の動きが出ている。日本生命では、9月末に5000億円弱だったPIIGS向け投融資を直近で3000億円台前半まで圧縮。明治安田生命も、今年9月時点で約1200億円あった投融資を700億円まで引き下げた。こうした中、11月28日にパリ・ユーロプラス主催のファイナンシャル・フォーラムが開かれ、さまざまな提言がなされた。
帝国ホテル(東京都千代田区)で開催されたパリ・ユーロプラス主催の第15回年次ファイナンシャル・フォーラム「新規制と経済成長の調和へ―金融界の挑戦」では、フランス中央銀行のクリスチャン・ノワイエ総裁や日本銀行の西村清彦副総裁が基調講演したほか、「日仏連携の利点」「ユーロ圏の将来」「日欧の会計基準の推移」などをテーマにワークショップが行われた。
ワークショップの一つ、「グローバル・ポートフォリオにおける欧州系資産評価と好機」では、独立行政法人経済産業研究所の中島厚志理事長や日興アセットマネジメントのジョン・F・ヴェイル専務、ソシエテジェネラルアジア地区調査本部長のガイ・ステア氏の3氏が、今回の欧州財政問題における今後の見通しなどについての考えを示した。
中島氏は、欧州全体を一体的にとらえて一つに統合する思想「汎ヨーロッパ主義」がヨーロッパ文化の基盤になっていると解説。「ヨーロッパ文化はギリシャ文明を源泉としている。そのギリシャがユーロ圏から脱退することは欧州統合の求心力がなくなることを意味し、考えられない」と述べた。加えて、ユーロに通貨統一する直前のドイツマルクと日本円の為替相場の推移を示した上で、「ユーロに統一していなければ、ドイツ経済はマルク高に苦しんでいた可能性がある」と説明。ドイツがユーロ圏から脱退することも現実的ではないとした。
ヴェイル氏は、昨今、ヨーロッパ全体で財政緊縮が行われている一方、PIIGSのスペインやギリシャの経常収支が改善に向かっていることを指摘。また、観光や輸出産業が好調で、ファンダメンタルズが改善している点を挙げ、「今後も経済指標の改善といった良いニュースが続けば事態は次第に好転し得る」と強調した。また、来年には財政問題が底を打つ可能性があるとの見通しを示し、「現在の悲観的観測は行き過ぎている」と述べた。
ステア氏は、欧州危機は各国の財政収支の改善努力や、EU全体の支援の方向性などが具体化する中で改善基調に向かいつつあることを指摘。一方、ギリシャの債務問題については「EUの中でも特異なケースであるともいえる」との考えを述べた。また、90年代後半以降、債務削減に成功したベルギーの事例を挙げた上で、各国の財政収支の改善に向けた取り組みに関し、評価できる点や今後の見通しなどを示した。
その後、講演者3人によるパネルディスカッションが行われ、欧州国債の一般的な評価や今後の市場成長などについて意見を交わした。欧州国債の評価について「債務問題の影響から過小評価されているものが多い」といった意見が多く提起されたほか、ヨーロッパのファンドマネージャーが弱気になっているとの指摘もあった。今後の市場成長については「財政健全化とともに、新興市場にけん引される形で成長していく」あるいは「アジアでの人口増加による経済成長がヨーロッパ経済の成長をもたらす」といった発言が出た。
また、会場の参加者からの「さらに踏み込んだ形での積極的な構造改革なしには問題の根本解決にはつながらないのでは」との意見に対して、パネリストは「問題解決には各国が財務健全化を図ることだけではなく、法人税引き下げなど経済活性化策による経済成長も必要」との考えを示した。 |
[2011-12-16]
三井住友海上・インターリスク総研、海外製造物責任オープンセミナー開催
三井住友海上とインターリスク総研は11月10日、東京都千代田区の三井住友海上駿河台ビルで「海外製造物責任―米国および中国の現状」と題したセミナーを開催した。両国で多くの訴訟を手掛ける弁護士二人と、リスク管理体制のコンサルティングを手掛ける専門家が、それぞれの視点から企業が取り組むべき課題や姿勢について解説。当日はメーカーや商社の総務、品質管理、リスク管理部門などを中心に約100人が参集した。
最初にあいさつしたインターリスク総研コンサルティング第一部の山本英昭部長は「世界的な消費者保護の流れの中で、事故報告制度やリコールなど、製造物責任をめぐる課題はますます大きくなっている。今回のセミナーを参考に今後の取り組みに活用してほしい」と述べた。
企業の弁護を専門とし、米国で数多くの日系企業の弁護経験を持つウィルソン・エルサー・モスコウィッツ・エデルマン・アンド・ディッカー法律事務所のフィリップ・クァランタ弁護士は「米国訴訟の傾向~原告の訴訟戦術およびそれへの対応」と題して講演。原告側による会社トップの証人喚問要求は和解額のつり上げや、経営者の証言の粗をつくことが狙いだとし、企業が証拠開示義務を尽くすことを原則としつつも、弁護士が同席できないビデオや電話での証言録取はできるだけ避けるべきだと指摘した。また、企業に圧力を掛ける目的で要求される被告会社証人の出廷命令への対応や、マニュアルからネット公開書類や広告に至るまで、幅広い企業・製品関連文書が原告側に証拠として利用されることを踏まえ、企業のリスク管理体制による文書公開前のチェックや公判に向けた事前準備の必要性を強調した。
中国で多くの訴訟を手掛けた経験を持つ大野総合法律事務所の市橋智峰弁護士は「中国の製造物責任と消費者問題」と題し、変化の激しい中国市場の製造物責任について、統計と法制度、特徴的な事例を基に解説した。中国の消費者問題では、損害賠償額よりも不買運動などの消費者運動の影響が大きく、メディアのセンセーショナルな報道が火に油を注ぐケースも多いことを指摘した上で、衣料品や食品、携帯電話などを中心に品質に関するクレームが多い一方、近年はサービス部門へのクレームも増えているとした。また、中国では製品品質法と不法行為法41条が製造物責任の主な根拠法となるが、国家や業界が定める基準に合致していても欠陥ありと指摘されたり、過失がなくても責任を負うことがある「公平責任原則(無過失責任)」に留意すべきだと指摘。無過失責任は生産者だけでなく販売者や輸入者、ブランドライセンスを与えた企業なども対象となることや、生産者だけでなく販売者もリコール責任を負うことに注意を喚起した。さらに中国では二審制で裁判が迅速に進むために準備期間が短いこと、地方を中心に地元びいきの判決が出やすいこと、証拠文書の公証・認証が必要なこと、外国語の文書には法定翻訳が求められることや、裁判所指定の有資格鑑定機関による鑑定の重要性などを説明した。
インターリスク総研コンサルティング第一部の井上知己上席コンサルタントは「企業の製品リスク管理体制の確立に向けて」と題し、国内外の製品安全に関する動向と企業対応のポイントを解説した。米国でPL訴訟の件数、評決額が上昇傾向にあることや、中国での消費者意識の高まり、欧州の集団的救済制度の統一化といった動きのほか、国内でも製品安全行政の取り組みが強化されていると指摘。その上で、経営層の積極的な関与の下で製品安全の方針や目標を明確化し、リスクアセスメントの導入や、製品安全と被害者救済の両面で対策を立てておく重要性を強調した。 |
[2011-12-16]
NTTドコモ、「1日自動車保険」順調
NTTドコモが10月4日から提供を開始した「ドコモ ワンタイム保険(1日自動車保険)」が順調な滑り出しを見せている。契約者は、10~20歳代の自動車運転免許取得後間もない層や免許があっても自分の車を所有していない層が中心で、NTTドコモが予想したとおりの展開になっている。同保険は、来年1月1日から「ちょいのり保険」というペットネームで、東京海上日動が委託しているすべての保険代理店での取り扱いが始まる。NTTドコモでは「代理店による取り扱いが開始されれば、携帯電話を通じた保険加入スタイルが広がり、契約の伸びが見込まれる」と期待を示している。
同保険を開発した東京海上日動では、年間契約のドライバー保険を提供しているが、“1日単位の自動車保険”は業界初。必要な日数分だけ携帯電話で加入できる点が大きな特徴で、友人や親族の自動車を借りるユーザーがターゲット。自動車を運転する日に限定した短期間での契約が可能なため、保険料も割安だ。
同保険には、顧客ニーズに応じた二つのプランがある。車両補償なしプランが1日当たりの保険料500円で、対人・対物無制限、搭乗者傷害1000万円、車両搬送費用10万円を補償。車両補償ありプランは1日当たり保険料1000円で、さらに借りた車の補償(修理費用・買い替え費用を300万円まで補償)が加わる。
加入は、iモードの専用サイト(iMenu→メニューリスト→ドコモの保険→ワンタイム保険)で最小限の項目に入力するだけで即座に行え、保険料は月々の携帯電話料金と合算されるため支払い手続きが不要。
同保険を利用できるのは、FOMA(R)でiモードを契約している個人で、契約者本人と二親等以内の親族が利用可能。補償対象となる自動車は、運転者本人かその配偶者以外の個人が所有している自動車(自家用普通・小型・軽四輪乗用車の3車種)で、レンタカーを含めた法人所有自動車は対象外。
東京海上日動の市場調査によると、運転免許証を保有しているものの自動車を所有していない10~20歳代のうちの約85%が「親などの自動車を運転したいと考えている」という。また、無保険運転による事故は年間10万件以上発生しているとの推定もあり、同保険を提供することで無保険運転事故縮減への貢献も目指している。
「ドコモ ワンタイム保険(1日自動車保険)」は、昨年3月30日に発表されたNTTドコモと東京海上日動との包括的業務提携の一環。すでに、「ドコモ ワンタイム保険」として、海外旅行保険、スポーツ・レジャー保険、ゴルファー保険、国内旅行保険を昨年4月から、「ドコモ 医療保険」を今年7月から提供している。
NTTドコモでは「今年度中にはこれらの保険サービスをスマートフォンに対応させる予定。モバイルを核とした“総合サービス企業”を目指し、今後も顧客一人一人にベストなサービスと安心・安全を提供していく」方針だ。 |
[2011-12-14]
ミュンヘン再保険、タイ洪水の保険損害5億ユーロと発表
ミュンヘン再保険は12月8日、タイ洪水による同社の保険損害が約5億ユーロ(税引前)になる見込みと発表した。水の引きが非常に遅く、完全に引いていない地域もあることから、保険損害はあくまで暫定数値。バンコク周辺で最も被害の大きかった工業団地の損害予想はいまだ難航している。洪水被害は工場建物だけでなく、損害の重要部分を占める建物内の高価な製造装置類にまで及んでいる。
同社のトルステン・イェヴォレック取締役は「タイ洪水によって警鐘が鳴らされた。経済のグローバル化に伴い新興国の重要性が高まっている。このため新興国は、損失軽減のための防災・適応策を改善しなければならない。保険業界は、リスク引き受けを通して損失軽減のための支援をする。ただ、リスク引き受けにはリスクに見合った料率と契約条件が重要」とコメントした。
洪水は約600人の命を奪った。数十万軒の家屋や広範囲の農地が浸水したほか、主として日系企業の工場が入る7カ所の工業地帯が被害に遭った。多くの電子部品メーカーが浸水の被害に遭い、生産遅延やサプライチェーンの寸断を招いた。タイはパソコンのHDD(ハードディスクドライブ)の部品生産・供給で約25%の世界シェアがあるため、洪水による直接的な影響を受けた。
洪水はネットワーク化された世界経済のぜい弱性を改めて浮き彫りにした。「異常事態が発生しても生産工程を維持するため、代替サプライヤーを確保することが企業にとって重要。再保険会社は今後さらに、こうしたリスク管理における側面を構外利益保険(CBI)の料率に考慮していく」(イェヴォレック氏)。同社の保険損害に占めるCBIの割合はまだ明らかになっていない。
首都バンコクのあるタイ中央部の平地は海抜が低いことから、5月中旬~10月の雨期に洪水が発生しやすい。50年間で最悪といわれる今年の洪水は、雨期に発生した異常豪雨が原因。ラニーニャが異常豪雨をもたらしたと推測されているが、雨期がラニーニャと重なることで豪雨が激化。洪水はバンコクの大部分を冠水させた。 |
[2011-12-14]
カカクコム、入院費用・相場シミュレーション開始
㈱カカクコム(東京都渋谷区、田中実社長)は12月9日、「入院費用・相場シミュレーション」のサービスを開始した。年齢と性別を入力するだけで、入院時の平均相場データ(注)が表示される仕組みで、表示された相場データ(入院期間、健康保険を利用した場合の入院日額)をもとに、該当する定期医療保険や終身医療保険を簡単に探すことができる。さらに、入院限度日数や入院給付金日額からも自分に最適な保険を検索することが可能だ。同サイトには、「価格.com」トップページの保険カテゴリーから入ることができる。
カカクコムが運営する「価格.com」は、消費者に“買ってよかった”と思える買い物を提供するため、あらゆる製品・サービスを、販売価格やクチコミ情報、ランキングなどの視点から比較・検討できる買い物支援サイト。保険や保険商品に関する情報提供も随時拡充している。
今回は、「これまで、消費者が入院時の医療費や入院日数といったデータを探すのは大変だった。医療保険・がん保険を決める際の分かりやすい情報の提供が必要」として同サービスを開発した。例えば、30歳・男性が同サービスを利用する場合は、最初に年齢(「30~34」歳)、性別(男性)を選択して「試算する」のボタンを押せば一覧表が表示される。「30~34歳/男性の入院時の平均相場データ」と題する一覧表には、試算期間2種(今後10年間、85歳になるまで)の、入院確率、入院期間、入院日額、保険検索の各欄がある。具体的には、例えば、今後10年間の、入院確率は9.29%、入院期間は26.0日、入院日額は1万699円といった内容を知ることができる。
さらに、「30~34歳/男性が、今後診療を受ける可能性がある主な傷病一覧」の表も表示されることから、数十種類の傷病ごとの総患者数、総入院患者数、平均傷病在院期間、入院費用(健康保険利用で自己負担3割の場合の1日当たりの費用、目安となる窓口での支払額)、今後の発生率なども分かる。
同ページ内には、《人気の保険ランキング》《いざという時に備え「安心」を探す(保険を自分で探す、専門家に相談する)》などのコンテンツもあり、納得するまで調べるための情報も満載だ。
同社100%子会社の募集代理店カカクコム・インシュアランスでは、新サービス開始に当たり「サイトを入り口として保険契約を拡大していくためには、保険やその周辺の情報発信の強化が必要と感じている。そのため、商品比較サービスの種類も増やしており、直近でも海外留学保険比較、介護保険比較を追加した。今後も『価格.com』との連携という強みを生かし、消費者にメリットを提供するとともに保険契約の一層の伸展にもつなげたい。まだ代理店委託関係のない保険会社に対しても、サイトに保険商品の情報を掲載しておけば消費者が関心を持った場合に送客できるので、ぜひ連携したい」と意欲を見せている。
(注)相場データは、カカクコムが独自ロジックで算出した予測値。 |
[2011-12-13]
RGAリインシュアランスカンパニー日本支店、商品開発セミナー開催
RGAリインシュアランスカンパニー日本支店は11月16日、東京都港区の東京ミッドタウン・カンファレンスで「商品開発セミナー」を開催した。今回は、就業不能保険の商品アイデアや銀行窓販、再保険会社との連携による商品開発、英国におけるE―アンダーライティングをテーマに同社の各分野の専門家が講演。当日は、生保会社、損保会社、共済の営業・商品開発・数理部門などから約150人が参加した。
第1部では、RGAインターナショナルのアジア太平洋ビジネス開発担当ヴァイス・プレジデントを務めるジェローム・マトルンドーラ氏が「日本市場に向けた就業不能保険の商品アイデア」と題して講演。商品デザインについて、給付水準は税引き後所得の50~70%が適切だとしたほか、就業不能の定義や免責期間などがポイントになると指摘した。また、仕事への復帰を奨励する給付内容とすることが重要とした上で、好ましい給付内容と避けるべき給付内容を挙げて説明した。
引き受け査定の留意点については、死亡リスクでは重要でない疾病が就業不能では重要な場合があることなどを指摘。さらに、海外の事例を紹介し、「成功している商品の共通点はシンプルで分かりやすく、支払い事由が明確で、短い給付期間が設定されていることだ」と述べ、「新しい市場への進出には多くの課題があるが、当社は知識や専門性を有しており、クライアントを支援できる」と強調した。
第2部では、RGA日本支店のエグゼクティブディレクターマーケティングのフィリップ・フォンク氏が「銀行窓販2012年4月第5次規制緩和による新たなビジネスチャンス」をテーマに、海外の銀行窓販の状況や、日本のこれまでの規制緩和のポイントを解説。銀行窓販の変遷に関して、売れ筋商品が一時払い変額年金から一時払い終身へと変わってきていること、同社の調査結果から、メガバンクの販売員は、貯蓄性、保障性商品共に知識があり、販売意欲が高く、一方、地銀や信託銀行では、貯蓄性商品に重点を置いていることなどを説明した。
保険情報の利用に関しては、第5次規制緩和以降も非公開金融情報の保険募集への利用は厳格に制限される一方、非公開保険情報の規制はそれほどではないとし、「保険情報の分析による顧客ニーズに最適な商品提案や、引き受け査定情報の活用による無選択型商品などの販売が可能だ」と述べるとともに、「融資先規制とタイミング規制の緩和は歓迎されるべき見直しだ。銀行窓販は多くの国と同様、日本でも成功する」との考えを示した。
第3部では、同支店の中司伸彦アソシエートディレクターが「再保険会社との連携で商品開発はどう変わるのか」をテーマに講演。「当社のグローバル戦略の商品開発サポートはクライアントと共に商品を開発し、リスクを共有することで利害の方向性を一致させる」と説明し、日本と海外のサポート事例を紹介した。サービス内容については、RGAとの再保険協約の締結、出再対象の新商品開発の無償支援、E―アンダーライティングなどの実務面の支援の3段階で提供するとしたほか、保険者のメリットとして競争力の高い商品開発や新商品開発に伴うリスク管理など、契約者のメリットとして適正な価格設定や円滑な契約手続き・告知などを挙げた。
第4部では、RGA UKサービスのシニア・ヴァイス・プレジデント&チーフ・マーケティング・オフィサーを務めるジェイソン・ハーレー氏が「英国におけるE―アンダーライティング」と題して講演。保険市場の大規模化、競争の激化、規制の厳格化が進む英国で成功する鍵は効率化だと強調した上で、E―アンダーライティングの導入事例を紹介。「E―アンダーライティングはプロセス改善とコスト削減に効果があるほか、リスク管理をサポートできるため、企業戦略の中で重要な役割を果たす」と強調した。 |
[2011-12-12]
新「ジブラルタ生命」誕生へ
ジブラルタ生命、AIGエジソン生命、エイアイジー・スター生命の3社は、法律に基づく合併に関する認可などを前提に、来年1月1日付で合併することとしていたが、12月8日に金融庁から保険業法第167条第1項の規定に基づく合併の認可を取得した。
合併により誕生する新会社「ジブラルタ生命」では、1万人を超える営業社員、3000店を超える代理店ネットワークを通して700万件を超える契約に対し、きめ細かいサポートやサービスを提供。今後も、より多くの顧客にライフステージに応じた最適な保障を提案していくとしている。
合併新会社の概要は次のとおり。
1.商号:ジブラルタ生命保険㈱
2.代表者:佐藤惠代表取締役社長(現ジブラルタ生命代表取締役副社長)
3.本社所在地:〒100―8953東京都千代田区永田町2丁目13番10号
4.資本金:755億円
5.主な株主構成:プルデンシャル・ホールディング・オブ・ジャパン88.8%、ファイナンシャル・アシュアランス・ジャパン11.2%
6.総資産:8兆678億円*
7.保有契約高:34兆993億円*
*総資産と保有契約高は、2011年9月末のジブラルタ生命、AIGエジソン生命、エイアイジー・スター生命の単純合算数値 |
[2011-12-12]
損保ジャパン、貯蓄型メーン2商品の案内を強化
損保ジャパンは、顧客の貯蓄ニーズに対応して「スーパーXPⅡ(年金払積立いきいき生活傷害保険」と「ゆとりーど10(積立傷害保険)」の貯蓄型メーン2商品の案内を強化している。貯蓄型商品に顧客の注目が集まるボーナスシーズンや退職金受取時期に合わせて提案し、拡販につなげるのが狙いだ。また、2012年末までに約30兆円が払い戻される個人向け国債の大量償還の受け皿商品としても展開していく。代理店としては、ボーナスシーズンなどのドアノックツールに活用できるほか、保険期間が長期の両商品の販売によって顧客との接点強化を図ることが可能になる。個人商品業務部積立グループの城所大輔氏は「充実した商品ラインアップをそろえており、多様なニーズに対応できる」と強調している。
「スーパーXPⅡ」は一時払の年金型積立保険。保険料200万円から加入でき、保険期間は6年。保険期間の満了後は年金払の原資(満期返戻金)を分割して一定年数(3~6年の間で選択)にわたり年金として支払う。満期時に一括で支払うことも可能だ。また、「保険期間中に生じた所定の交通乗用具による交通事故」および「建物または交通乗用具の火災による事故」による死亡・後遺障害を補償する。一時払保険料200万円の場合(2011年12月1日から12月31日までの補償開始契約)、年金払原資は202万6700円、死亡・後遺障害保険金額は252万4000円となる。
積立部分の保険料は損保ジャパンが運用し、保険期間中の運用利回りが予定の利回りを超えた場合、満期時に満期返戻金にプラスして契約者配当金を支払う。契約者配当金は満期返戻金と合わせて年金払の原資となる。
同商品は、直近の市場金利を勘案して毎月プランを見直し、市場金利に応じた受取額の変動などを商品に反映させた上で代理店に毎月の販売パターンを提供。代理店は、代理店業務支援システム「SOMPOJ―NET」に掲載されている毎月の販売パターンを確認して契約者に案内する。
定期的な情報のほか、12月のボーナスシーズン用の情報提供なども行っている。また、顧客に提案する際に必要な事項を入力すると、提案書を作成できる計算ツールも提供している。
一方、「ゆとりーど10」は一時払の積立傷害保険で、保険期間は10年。保険期間の満了後、満期返戻金を一括で支払う。保険期間中に生じた事故による死亡・後遺障害を補償する。例えば、一時払保険料200万円の場合、満期返戻金は209万4230円、死亡・後遺障害保険金額361万1000円となる。
両商品は確定型、告知不要で、シンプルで分かりやすい商品となっているため、顧客に提案しやすい。
また、2012年末までに大量に払い戻される個人向け国債の大量償還に対応する提案も進める考えで、「国債の償還を迎え、今後も安定的な資産運用を考えているお客さまに対して、元本確保、確定型で安心して加入できる両商品を案内していく」(城所氏)。「スーパーXPⅡ」の毎月の販売パターン見直しなどを活用して常にタイムリーな情報を提供することで、時宜に適った提案を推進する。
同社では、貯蓄型メーン2商品に加え、一時払保険料20万円から加入できる積立傷害保険「スーパーX」も用意しており、顧客のニーズや資金などを踏まえながら、幅広い選択肢の中から最適な商品を提案していく方針で、「これらの商品は、貯蓄に関心のあるお客さまの資産運用手段の一つとして提供している。いずれも長期契約のため、顧客グリップ力を強化でき、新たな商品提案にもつなげられる」(城所氏)としている。 |
[2011-12-09]
カーディフ損保、悪性新生物診断給付金特約を発売
カーディフ損保は、住宅ローン契約者本人への保障に加え、家族を支える女性配偶者へのサポートを提供する新たな特約として悪性新生物診断給付金特約(配偶者・女性用)を開発し、12月1日から銀行を通じて提供開始した。
女性の働き方や家族のライフスタイルの変化に伴い、日常生活だけでなく、将来に向けたライフプランやマネープランにおいて、女性が担う役割は一層高まっている。特に、長期にわたり安定的・計画的な資金が必要となる住宅ローンの返済中に女性配偶者が、がんなどの病気にかかると、共働きの場合は収入が減るのはもちろん、専業主婦の家庭でも家事負担が増えるなど、家族の生活に大きなダメージを与える。
新特約は、住宅ローン返済世代の30~50代の女性にとって最大の不安の一つである乳がんなど女性特有のがんに生まれて初めて罹患(りかん)した場合、住宅ローン契約者(男性)の女性配偶者に対して診断給付金として100万円を一時金で支払うもの。ローン契約者の配偶者まで幅広く保障することで、住宅ローンを組む顧客に一層の安心を届ける。また、金融機関に向けては、住宅ローンの優遇金利競争が一段と激しさを増す中、同特約商品を加えることにより、付加価値面での競争力強化の機会を提供し、新しい顧客の開拓や借り換え需要への対応を可能とする。
カーディフ損保では、顧客のさらなるニーズに応えられるよう、引き続き同社の強みである金融機関の商品に相乗効果のある保険商品を合わせて提供するバンカシュアランスを推進していくとしている。 |
[2011-12-08]
金融審、保険会社のグループ経営規制WG最終報告書案を取りまとめ
金融庁は12月2日、金融審議会「保険会社のグループ経営に関する規制の在り方ワーキング・グループ(WG)」(座長=洲崎博史京都大学大学院法学研究科教授)の第9回会合を開き、最終的な報告書案を取りまとめた。保険会社の海外進出やグループ内での経営効率化といった課題を受け、外国保険会社の買収などにかかる子会社の業務範囲規制の見直しを含めた規制の在り方について議論。今後、同会合で出た意見を元に修正を加えた最終報告書案を公表するとともに、金融審議会に報告し、保険業法の改正案として国会に提出する見通し。
会合では、事務局が前回までに出た各委員の意見を反映させた見直し案を報告。主に契約者保護の観点や規制内容を明確にした文言が本文や脚注に多く盛り込まれた。
修正案は①外国保険会社の買収などにかかる子会社の業務範囲規制②保険会社の子会社などへの与信(株式の取得を含む)にかかる大口与信規制③保険募集の再委託④保険契約の移転にかかる規制の在り方―の4点について規制緩和を図る内容となった。
外国保険会社の買収などにかかる子会社の業務範囲規制では、買収した外国保険会社の子会社のうち、既に保有が認められている子会社対象会社以外の会社についても、原則として一定期間内に限り保有を認めるとし、一定期間内に処分が困難であるなどの事情が認められる場合には、行政庁の承認など一定の条件の下、当該期間を越えての保有を例外的に容認することとした。
保険会社の財務の健全性を確保する観点から定められている大口与信規制については、問題となり得る「大規模な保険会社の買収」「保険部門の分社化」などのケースでは、資産運用にかかる信用リスクではなく、本業の事業展開にかかるリスク管理の問題と考えられることから、保険子会社に対する与信のうち、事業リスクの側面が強い株式の取得については当該規制の対象から除外することが適当であるとし、貸し付けや債務保証などの与信については、信用リスクが強いことも踏まえ、今後の運用実態などを見ながら問題がないと確認された場合に適用除外にするとした。
保険募集の再委託については、保険会社から保険募集人に対する直接の委託のみを認める現行制度を修正。再委託者(既に保険募集人と委託契約を締結済みの保険会社)が委託者(保険募集人と委託契約を締結していない保険会社)と同一グループ内の保険会社の場合に限定して、同一グループ内の保険募集人(再受託者)に対する委託者の保険募集人管理の方針を踏まえた適切な対応を行うことを前提に保険募集の再委託を認めるとした。
保険契約の移転にかかる規制については、従来の「責任準備金の算出の基礎が同一」という移転単位の規制ではなく、保険契約者間の公平性や保険契約者保護の観点から必要な見直しを行いつつ、移転対象とする保険契約の選定基準の合理性や、対象範囲の明確性、移転の必要性などの観点から移転の是非について判断していくことが適当であるとした。
丹野美絵子委員(全国消費生活相談員協会理事長)は保険契約の移転について「契約者の中には保険会社と保険商品の両方を選んで加入する人もいるので、同制度の運用に際して許容しがたいと思う人もいるだろう。そうした契約者の信頼を排しない運用を保険会社に、また、認可する行政当局にお願いしたい」との意見を述べた。
また、同WGの終了に際して金融庁の森本学総務企画局長は「保険会社の海外展開やグループ経営の充実という課題がある中、今回の検討テーマはとても重要である一方、当初から現行規制との関係で整理するのが難しいと考えていたが、(委員の)皆さんが熱心に議論し、良い形で取りまとめていただいたことを大変ありがたく思っている。この議論の過程でさまざまな角度から大変有意義な示唆をいただいたと考えており、今後、取りまとめの趣旨に沿って法改正を含む制度整備を図るとともに、運用についても指摘を踏まえて適切に進めていきたい」と述べた。 |
[2011-12-07]
生保協会、郵政改革関連法案で見解表明
生保協会(筒井義信会長)は12月2日、現在、国会で審議されている郵政改革関連法案ついて、同協会の考え方をあらためて表明した。
同協会では、従来から、郵便保険事業の見直しに当たっては、健全な生命保険市場の発展の観点から、同種の業務を営む事業者との適正な競争関係を阻害しないための「公正な競争条件の確保」と引き受け・支払いなどの「適切な態勢整備」が実現しないのであれば、かんぽ生命の加入限度額引き上げや業務範囲の拡大は容認できない旨、繰り返し主張してきた。
1.かんぽ生命への間接的な政府出資について
法案では、政府が日本郵政の議決権の3分の1超を、日本郵政がかんぽ生命の議決権の3分の1超を、常時保有することとされているが、政府出資が続き「政府が何らかの支援を行うのではないか」との消費者の認識が生ずるような状態では、「公正な競争条件」が確保されない懸念がある。従って、かんぽ生命への間接的な政府出資は解消が図られるべき。
2.かんぽ生命の業務範囲拡大の手続きについて
現在は、かんぽ生命の業務拡大について、主務大臣による「認可」やそれに伴う「委員会への意見聴取」、そして監督上の措置にかかる「命令」権限が規定されているが、民間保険会社と同様に保険業法上の規制はあるものの、法案ではこれが「届出」事項とされ、届け出違反の場合にも主務大臣による「勧告」がなされるのみとなっている。
加えて、日本郵政に対する政府の議決権、かんぽ生命に対する日本郵政の議決権が共に2分の1以下となった場合には、届け出ならびにこれに対する主務大臣の勧告と委員会への意見聴取などが不要とされているが、「公正な競争条件」が確保されるまでは、従来どおりの規制を存置すべき。
3.日本郵政へのユニバーサルサービスの義務付けとそれに伴う優遇措置について
法案では、日本郵政に生命保険のユニバーサルサービスを義務付けることとされているが、民間生命保険会社の代理店・募集人は全国を網羅しており、わが国の生命保険のユニバーサルサービスは既に民間生命保険会社の取り組みで実現されている。従って、日本郵政に対して生命保険のユニバーサルサービスの義務を課す必要はなく、また、その義務を課す代わりに、ほかの民間生命保険会社にはない優遇された「所要の措置」を適用する必要はない。とりわけ、「郵便保険会社が郵便局会社に業務委託する際に支払う手数料に係る消費税の非課税措置の創設」については、生命保険業界における「公正な競争条件」を阻害するものとなるため、断じて容認できない。
郵政改革に関する今後の国会審議では、「公正な競争条件の確保」の観点を踏まえ、将来にわたって真に国民のための改革となるよう、十分な審議が尽くされることを強く要望する。 |
[2011-12-05]
損保総研、諸外国の保険税制で調査報告書作成
公益財団法人損害保険事業総合研究所(濱筆治理事長、損保総研)はこのほど、諸外国における付加価値税、異常危険準備金などの保険にかかわる税制について取りまとめた調査報告書「諸外国における保険に関わる税制について」を作成した。
現在、わが国では少子高齢化が進む中で、消費税の引き上げも視野に入れて、社会保障・税一体改革の検討が進められている。損害保険契約は、消費税においては非課税取引に区分され、消費税は課されないが、損害保険を提供するために調達した財・サービスには消費税(仕入税額)がかかっており、保険会社が負担している。このため、仕入税額分は結果として価格に転嫁せざるを得なくなるなどの問題が生じている。そのため、消費税率が引き上げられる場合、この問題の影響はさらに大きくなる。
一方、2010年度の税制改正時に異常危険準備金制度が見直し検討の対象として取り扱われた経緯がある。近年、巨大化する地震・台風などの災害に対し、損害保険は、被災した保険契約者の復旧に大きな役割を担っている。損害保険会社は、再保険とともに、異常危険準備金の積み立てにより、巨額の支払保険金の資金を確保し、巨大な保険金の支払いが経営に及ぼす影響を最小限にとどめている。無税での積み立てという税法上の措置があって十分な準備金の積み立てが可能となり、大規模災害時の保険金支払いに万全を期すことできる。
こうした事情を踏まえて、わが国における保険に関する税制の在り方の参考とするため、主要な諸外国における保険に関する税制、特に、消費税と異常危険準備金などの取り扱いについて調査を行った。また、保険料税などの保険契約に課されるそのほかの税の調査も併せて実施している。
損保総研では、この調査報告書を在庫がある限り希望者に実費(税込み3000円+送料)で提供する。申し込みは損保総研のホームページ(http://www.sonposoken.or.jp/)から。 |
[2011-12-05]
第一生命、来年3月から保障充実割引を開始
第一生命は、「新・生涯設計」のコンセプトに基づく顧客サービスとして、2012年3月2日から、保険種類を問わず割引ランクと割引額を一律にした保障充実割引を新たに開始する。また、今年1月の“医師の診査や健康状態の告知なし”で同社所定の入院関係特約を一生涯保障の無配当終身医療保険「メディカルエール(終身型)」に変更できる「メディカルスイッチ」制度の取り扱い開始を踏まえ、来年4月2日(変更日基準)以降の特約終身化の取り扱いを停止し、保障見直し制度ラインアップの分かりやすさを向上させる。
第一生命では、「新・生涯設計」のコンセプトを具現化するため、例えば2010年9月に発売した5年ごと配当付終身保険「順風ライフ」について、“生きていくための保障”を充実させたい場合には終身保障の保険金額を低額に設定し、3大疾病などの保障や医療保障を充実させた設計ができるようにするとともに、今年9月から10年更新型や15年更新型の特約を付加できる年齢範囲を拡大するなど、顧客ニーズやその変化に合わせた設計ができるよう、商品設計の自在性向上を進めている。
これまで実施していた保険料割引制度は、保険種類ごとに割引を適用する保険金額(割引ランク)や割引額が異なるため、「順風ライフ」を例にとると、主契約である終身保険と死亡保障特約とで割引ランクや割引額が異なることになり、特に終身保険については、終身保険部分だけで保険金額が1000万円以上必要であるため、割引が適用されるケースはあまりなかった。
今回、取り扱いを開始する保障充実割引は、保険種類を問わず割引ランク・割引額を一律とし、契約ごとに契約全体の保険金額に応じた割引を行う分かりやすい仕組みとする。これにより、「順風ライフ」では、主契約である終身保険と死亡保障特約とで同じ割引が適用されることになるため、従来の保険料割引制度では割引が適用されにくかった終身保険についても保険料負担を軽減できるようになる。
なお、保障充実割引の開始に伴い、これまで実施していた複数の契約を合算した総保険金額により割引ランクを判定する「とくとく割引サービス」の取り扱いは終了するが、すでに加入している契約の同サービスによる割引については、来年3月1日時点の割引ランクを引き続き適用する。
また、同社では、1997年10月から、“医師の診査や健康状態の告知なし”で所定の入院関係特約の保険期間を一生涯保障に変更する制度(特約終身化)を取り扱っているが、2012年4月2日以降、その取り扱いを停止する。特約終身化は、保障内容は変えずに保険期間を終身に変更する制度で、特約終身化後の保険料は前納または年一括払いで払い込むことになる。一方、今年1月から、入院関係特約の保険期間を一生涯保障にする医療保障変更制度「メディカルスイッチ」の取り扱いを新たに開始。同制度では、診査・告知なしで入院関係特約を無配当終身医療保険「メディカルエール(終身型)」に変更するとともに、保障内容も最新の医療保障に見直せる。さらに、保険料払い込み方法は年一括払いだけでなく半年一括払いや月払いの取り扱いも可能で、変更後の保険料負担を抑えることができる。こうした状況を踏まえ、特約終身化の取り扱いを停止し、保障見直し制度の分かりやすさを向上させることにしたもの。 |
[2011-12-01]
MS&ADHD、変額年金の再保険会社を設立
MS&ADインシュアランスグループホールディングスは11月29日、三井住友海上プライマリー生命が販売する変額年金保険の再保険を引き受ける会社をグループ内に設立すると発表した。今後、関係当局の認可を前提に、三井住友海上の傘下に子会社として「MS Financial Reinsurance Limited」を設立し、2012年1月1日から業務を開始する予定だ。新設する再保険子会社の設立地は英国領バミューダで、資本金は60億円(三井住友海上100%出資)。
この再保険会社設立により、三井住友海上プライマリー生命では、変額年金の運用リスクなどを適切にコントロールすることができ、安定的な商品提供や新しい魅力ある商品を開発する体制が強化される。
MS&ADインシュアランスグループでは、今後も顧客ニーズに応じた商品を提供し、個人年金保険業界における地位をさらに確固たるものとすることをグループ全体で目指していくとしている。
三井住友海上プライマリー生命の主力商品である変額年金は、運用成績が悪化した場合でも死亡保険金や年金原資などを保証する最低保証付きの商品が主力となっている。新たに設立する再保険会社では、この最低保証リスクを、三井住友海上が有する金融取引やリスク管理のノウハウを活用し、デリバティブ取引などの金融市場を通じて、適切にコントロールしていく。その結果、新たなリスク管理体制が構築され、これまで以上に変額年金商品を安定的に提供することが可能となる。
MS&ADインシュアランスグループでは、生命保険事業を重要な成長領域と位置付けている。中でも、三井住友海上プライマリー生命は、変額年金と定額年金をバランスよく提供し、順調に業績を拡大してきた。また、今年4月1日に、三井住友海上プライマリー生命がMS&ADホールディングスの完全子会社となったことにより、グループ内の連携がさらに強化されるとともに、事業展開の機動力や柔軟性が一層高まっている。 |